第14話 対死にかけの星の意思

「別に僕は君たちに対して特に何か敵対心を抱いているわけじゃないけど……約束なんだ。ごめん。死んで?」

 

 僕は己が今握っている『明天』の力を開放し、一振り。

 それだけで陽向たちを囲んでいた有象無象共を容易く蹴散らす。


「ありゃ」

 

 一応そこそこ本気の力を込めた一撃。

 それを受けてもなお死にかけの星の意思は顔ひとつ変えることなく僕の刀を受け止める。


「面倒だなぁ……」

 

 ぎりぎりの戦い。 

 それは僕の望むかっこいい戦い方じゃない。圧倒的な力で敵を鏖殺する姿こそが僕の憧れる姿である。

 死にかけの星の意思は……ちゃんと強そうだった。

 ……『明天』だけじゃ普通に苦戦しそうである。 


「『星天』余」 

 

 死にかけの星の意思が……ただの黒い人型の三次元体の体が蠢き、その右腕が一つの斧へと変貌する。

 

「……っ」

 

 僕は眉を潜め、僕の方へと迫りくる死にかけの星の意思へと視線を送る。


「ぬんッ!!!」

 

 僕の方へと振るわれる斧。

 それを刀で一度受け流し、一度納刀してからの抜刀。

 万物を斬り裂く必殺の一閃が黒い影を捉える。


「ふぐっ!?」

 

 刀が黒い影を通り抜ける。

 しかし、僕の手には何かを断った感触が残る。

 まぁ……勝てるかな。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 踊るように振り回され、僕の方へと迫りくる斧をすべて回避し、一切の油断も奢りもなく冷静に刀を振るい、確実に断ち続ける。

 

「ふぅー」

 

 圧倒的な力での鏖殺は無理だが……ワンサイドゲームくらいなら使える。


「くっ」

 

 僕は死にかけの星の意思が次にどう動くかを本能的に読み、その動きを阻害するためにはどうすれば良いかを本能的に察して動く。

 

「糞がッ!!!」

 

 何も出来ず、ただただ僕に斬り裂かれるだけだった死にかけの星の意思は悪態をひとつついてから僕から距離をとる。


「ふぅーふぅーふぅー。人間風情がその力をそこまで使いこなすのかよぉ。ボケェ」

 

「使いこなせて当たり前でしょ?僕だもん」

 

 僕は刀を握り、死にかけの星の意思を何の油断も、驕りもなく視線を向ける。


「……」


 なんとなくの直感が……一瞬だけ緩んだような気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る