第8話

「えっとね!えっとね!秋葉原に行きたいの!」


「……秋葉に?」

 

 僕は陽向の口から出てきたその言葉に驚愕する。

 僕の中には陽向がオタクであるというイメージはない……というか、陽向はオタクではないだろう。

 陽向はゲームもしないし、ラノベも読まないし、漫画も読まないし、アニメも見ない。

 オタクの聖地である秋葉原に何故行きたいのだろうか……?


「そう!」

 

 陽向はニコニコと笑顔を浮かべている。


「なんで秋葉に行きたいの?」


「秋葉原に行きたいのッ!!!」

 

 僕の疑問。

 そこから返ってきたのは力強い言葉。しかし、一切僕の言葉の答えになっていない言葉だった。

 

「……」

 

「秋葉原に行きたいのッ!!!」

 

 キラキラとした瞳を浮かべ、満面の笑みを浮かべている陽向。


「まぁ、良いか」

 

 何故行きたいのかはわからない。

 しかし、陽向が行きたいと言っているのだし、行けば良いか。


「じゃあ、秋葉原に行こうか。僕もゲーミングPCが欲しかったんだよね」


「うん!買いに行こ!買いに行こ!」

 

 陽向がキラキラとして視線で僕に告げる。


「出かける準備は出来ている?」

 

 僕は魔法でサクッとパジャマから出かけるようの言葉へと着替えた後、陽向に尋ねる。


「うん!昨日のうちから準備していたから!!!」


「昨日のうちから……?」

 

 昨日のうちから準備しているって何……?昨日のうちから準備しているのであれば、昨日のうちから僕に秋葉原に行こッ!って言えば良かったのではないのだろうか?

 僕が断る可能性は考えていなかったのだろうか……?


「うん!昨日のうちから!服装もバッチリだよ!」


「……ん?あぁ。確かに」

 

 陽向の着ている服はいつもより数段気合が入っていた。


「ど、どうかな?」


「可愛いと思うよ。良く似合っている」


「……ッ!!!」

 

 満面の笑みを浮かべていた陽向の表情が更に明るくなる。


「ほんと!!!嬉しいッ!!!」


「うん。……陽向も準備終わっているのであれば行こうか。僕は魔法で何でも出せるから、準備とか要らないし」


「うん!行こ!」

 

 僕と陽向は秋葉原に向かって、家から出た。

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