第2話
「ふわぁ」
僕はあくびを浮かべながら、ゲームを進めていく。
誰も居ない部屋で好きなだけ惰眠を貪る。
僕にとって大事な、楽しい時間。
しかし、その時間を邪魔する無粋なものたちが何故か僕の周りは多かった。
「面倒……」
僕は億劫とした気持ちを抱えながら、視線をスマホから上げる。
「堕ちろ」
何よりも簡単な。
実に簡単な一言を口にする。
それでも僕にとっては立派な詠唱である。これだけであっても僕には十分なのだ。
「良し……っと」
僕のことを盗み見ていた無粋な存在は生命としての形から堕ち、ただの皮に囲まれた肉と糞尿の塊へと成り果てる。
「うん。これで良し」
煩わしいものが居なくなった僕は満足してうなづき、スマホへと視線を戻そうとする。
しかし。
「……ァ?」
僕は確実な悪意を察知する。
僕のいるこの場所へと向けられる数多の悪意。大きな何かや小さな何か。
しかし、それはただの些事に過ぎない。
それらが僕の脅威となる可能性は万に一つもないからだ。
「……ふむ」
問題はここじゃなくて、遠く。
「陽向、か」
僕は約束した。
陽向を守ると。
そして、今。陽向が危険な場へと陥っている。落とされている。
今動かねば約束を違えることになってしまうと僕という存在が予感する。
「行くかぁ……」
僕は約束を守る男である。であるのならば僕がここを動かない理由はない。
「ふんふんふーん」
僕はこの場から立ち去る。この場に何もかもを残した状態で。
こちらへと向かってくる悪意なんて捨て置いて。
別にここはそんなに大事ではない。重要度は低い。
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