第1話

「あ、陽向ー。ソース取って」


「うん。わかったー」

 

 僕はキッチンの近くに居た陽向からソースを貰って、自分の目の前にある目玉焼きにかけていく。

 僕は目玉焼きにはソース派の人間である。

 ソースが間違えなく一番美味しいと思う。陽向ははちみつを目玉焼きにかけているけど、正気とは思えない。何が美味しいのか、まるで理解出来ない。

 

 陽向の居る生活。

 何故か僕と同じようにアルファの家に陽向が居候するようになってから早一週間。

 最初の頃は何故か陽向と居ると、ものすごくもやもやしていたんだけど、なんかもう慣れて、なんとも思わなくなってきた。


 僕と陽向とアルファの生活は安定し、互いに気持ちよく暮らす事ができていた。

 ついているテレビに流れているニュースを見ながら僕は美味しい朝食を頂く。

 

「ん?陽向ぁー時間大丈夫なの?そろそろ学校だよ?」


 僕はちらりと視界の中に入ったスマホに表示されている時間を見て、アルファの方へと声をかける。

 制服を来て、先程食した自分のお皿を水につけているアルファは僕の言葉を聞いて驚愕の声を上げる。


「えっ!?もう、こんな時間!?私は行ってくるね!朝ごはんの食器の洗い物は任せたよ!」

 

 アルファは陽向を居候させる条件として、僕のお世話をすることを提示している。

 なんか知らないけどアルファは僕に何もさせたがらないのだ。

 本来であれば、洗い物は陽向がやらなくてはいけない。

 しかし、アルファが居ないときにはちょいちょい僕が家事などもやっていた。

 別に僕は赤ちゃんではない。特にすることもないし、家事くらい出来る。


「ん。簡単な家事くらいは任せてー」

 

 慌てて家を飛び出した陽向に向かってそう声をかける。

 既にアルファは仕事のため、家を出ている。

 家に残ったのは、何の身分も持たない僕だけ。身分を持っていない僕は学校に行くことも、仕事をすることも出来ない。

 家に引きこもるほか選択肢がない。


「むにゅー」

 

 僕は朝食を食べ終え、食器を持ってキッチンの方へと向かう。


「ふんふんふーん」

 

 食器を洗い終わった後は何のゲームをしようかなぁー。

 僕は気分良く鼻歌を歌いながら歩く。

 

 ■■■■■ 


 英雄足り得る少年は動かない。

 されど、英雄足り得ない少女は動く。

 

 物語は加速する。

 

 英雄の目醒の刻は近い。

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