第3話

「くっ……!」

 

 陽向は歯を食いしばりながら大地を駆け抜ける。

 未だに復興が完璧でなく、人の居ない日本の大地を。


「……」


「……」


「……」 

 

 それを追うのは黒い衣装に身を包み、己の姿を隠した存在たちであった。


「今回の……はッ!」

 

 陽向は焦燥感を抱きながら駆け抜ける。

 勇者である陽向は……彼女の持つ力は間違いなく一級品。

 表舞台にいる人間であれば……最上位に位置することは間違いないだろう。

 

 だがしかし、長い時をこの世の闇として君臨し、息を潜め続けていた大いなる闇が保有する戦力は、勇者である陽向を超える。


「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 日本政府とスタンピードの大事態を引き起こした犯人と思われている日本の闇との戦いは日々、激しさを増していて、日本政府の切り札の一つである陽向は日本の闇の勢力から攻撃を受けることが多くなっていた。。

 そんな陽向は大体の場合は己の前に現れた敵は排除するのだが、今回の敵は陽向一人で倒せるような存在ではない。

 だからこそ、陽向は必死に逃げていた。


「……陽向ッ!」


「佐倉!!!」

 

 逃げに逃げ、限界ギリギリの陽向のもとに援軍として佐倉が現れる。


「ちょっとだけ私が時間を稼ぐから陽向はその間に……ッ!」

 

 佐倉の力は格別。

 敵から逃げるというその一点において、佐倉の能力を超えられる能力はない。

 故に佐倉が時間を稼ぎ、その間に陽向が逃げるという作戦は一見理にかなっていると思うことができる。

 しかし、そもそもの話。

 目の前の敵を足止めできるほどの力が佐倉にあるのかと言われれば微妙なところがあった。


「いや!!!私も戦うわ!一人じゃ絶対に無理!」

 

 それを理解していた陽向は逃げるのを止め、佐倉の隣に立つ。

 強大な敵へと立ち向かう二人の少女……アニメとかだと良く見るような、熱くなる展開。


「やっほー」

 

 だが、この物語の主人公は絶大な強さをもった一人の少年なのだ。

 何者も勝てぬ……そんな存在がこの場に舞い降りた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る