第23話

 アルファがこの場にいる全員を殲滅した頃。

 この場にいるのが僕とアルファと陽向と佐倉だけ。


「……ぐす」

 

 ようやく僕のお腹でずっと涙を流していた陽向が泣き止む。


「大丈夫?」


「……ゔん」

 

 僕の疑問の言葉に対して陽向は鼻の詰まった声をあげる。


「それで?なんで陽向と……佐倉はこんなところに居るの?」

 

 本来後回しにすべき質問……。

 僕は、それを一番最初にそんな質問を陽向へと投げかける。


「亜蓮を探すため」

 

 そんな僕の質問に対して陽向はまっすぐに僕のことを見つめ、僕の名前を呼び、その言葉を告げる。


「……ッ。あっ、えっ……と」

 

 僕の口から、続きの言葉が出てこない。

 頭が上手く回らない……今まで生きてきて初めて己の心に小さな波が立つような感覚に陥る。

 ……煩わしい。


「……っ」

 

 僕は無意識のうちに若干の怒りを滲ませる。


「……んっ」


「……ひぅ」


「どこに行っていたの……?ずっと寂しかったんだよ?誰も亜蓮のことを覚えていないし。連絡先から亜蓮が消えちゃうし。どこにも亜蓮の姿はないし。私の隣に亜蓮は立っていないし。亜蓮のことが見えな」

 

「それだよ」

 

 僕は陽向の言葉を遮って口を開く。


「……なんでお前は僕のことを覚えているの?僕のことを覚えているなんてありえないんだけど」


「私が亜蓮のことを忘れるわけ無いじゃん!」


「理解出来ない。僕の力は己の意思に関わらず、強制的に人との縁を切る。そこに差は存在しない。……なんでお前は僕のことを覚えているの?」

 

 ムカムカする。

 やけにムカムカする。気に食わない。癪に触る。よくわからない。

 ただただムカムカする。


「なんで?お前は一体何者?」」


「わ、私は……」

 

 陽向は体を震わせ、口を開き、音を発生させる。


「私は亜蓮の唯一の理解者で、孤独を和らげてあげるために生まれてきたの!!!」


 堂々と、陽向は、はっきりとした言葉で、僕に向かってそう告げる。

 僕のことなんて何も知らない陽向が。

 

「……」

 

 ものすごくムカムカする。ただただムカムカする。もっそいムカムカする。

 

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