第22話

「王の凱旋を讃えよ」

 

 僕はそれっぽいことを言いながら殺されそうになっている陽向のもとに駆けつける。

 以前、陽向のことを守ると約束してしまったからね。

 ちゃんと約束は守らないと。


「亜蓮ッ!!!」

 

 僕の絶対的な力、その圧力。

 その前に全員がひれ伏す……はずだった。

 しかし、僕の圧力に屈さずにいた陽向は、何故か僕の名前を呼んで抱きついてきた。


「……は?」

 

 僕はそんな陽向を固まる。


「亜蓮亜蓮亜蓮亜蓮亜蓮ッ!!!なんで居なくなっちゃうの!?居なくなちゃ嫌だよ!!!一緒!ずっと一緒だから!もう話さないからぁぁぁぁぁぁ!!!」


「???」

 

 陽向の口から漏れ出す怒涛の言葉の数々。

 それを前に僕はただただ困惑する。


「……え?は?……ん?な、んで覚えて……?」

 

 別に僕は陽向の前で、闇の力を使って戦ったことなど最期の一回しかないし、陽向は別にアルファのように憎悪や恐怖を愛情であると認識しているような狂人でもない。

 

「忘れないッ!忘れるわけがないよッ!……亜蓮のことを私が忘れるわけ……ない、じゃん。……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」

 

 陽向はとうとう泣き出してしまい、僕の胸元に自分の顔を擦り付けてくる。

 僕の服は鼻水と涙でぐちょぐちょになってしまう。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん」


「ふっ……泣かないで」

 

 僕は涙を流し、肩を震わせる陽向に苦笑しながら彼女の背中を擦ってあげる。


「うぅぅぅぅぅぅ」


「ご友人にございますか?」


 いつの間にか僕の横へと跪いていたアルファが僕に尋ねてくる。


「うむ……その男に掴まれている少女以外は殺せ」


 僕はアルファの言葉に頷き、彼女に命令を下す。


「了解いたしました」

 

 跪いている多くの人たちの方へとアルファは己の剣を持ったまま近づいていく。


「クッ……!」


「……」


「……あっ」

 

 なんとか僕の圧力に反抗しようと奮起した勇気ある子も居たのだが……普通に叩き潰してあげた。圧力で。

 普段はちゃんと戦って僕のかっこよさを示したいんだけど……こうして自分に部下がいる場合、こんな風に遊んでもいいよね。

 

 僕は泣いている陽向の背中を擦りながら、サクサクと動くことが出来ない敵をサクサクと殺しているアルファを眺めた。

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