第21話

 東京タワーの地下。

 大日本帝国のときより闇に潜みし、絶対的な悪意の、ナチス親衛隊や大日本帝国の極秘情報部……果てにはソ連崩壊時に行き場を失ったソ連が誇るKGBのごく一部まで抱える頭を失った巨大な闇の眠る都。

 

「ふむ……単身で乗り込んでくるとは。なかなか根性のある奴だと思っていたが……こんな小さな協力者が居たとは……」


「……佐倉ッ!」

 

 そこには多くの人影に囲まれている一人の少女……陽向が居た。

 

「ごめんッ!!!」

 

 陽向の前に立っている男。その男の手にはこれまた小さな少女、佐倉が握られていた。


「小さな協力者。誰かと思ったら、逃げ出した実験体ではないか。我以外見つけられぬゆえ、捜索を諦めていたのだが……そちらから来てくれるとは僥倖」


「なんで……ッ!あんたがここに!?」


「ふむ。何故それを道具でしかないお主に話す必要が……?どうせ再び収容されるのだ。関係なかろうて」


「クッ……!」

 

「佐倉……ッ!」

 

 囚われた佐倉を助け出すために動き出す陽向……しかし、そんな彼女の体は既にボロボロで、戦えるような状態にはとても見えなかった。


「無駄だ。愚かだったな。汝ら二人では我らを落とせん」

 

 男はつまらならそうに呟き、佐倉に止めをさそうと近づいていく。


「……亜蓮ッ!」

 

 絶対絶命の陽向は目を瞑り、祈るように亜蓮の名を呼ぶ。

 そんなときだ。


「王の凱旋を讃えよ」

 

 この場を圧倒的なまでの闇が包み込み……この場にいる全ての……陽向を除く全ての人間をひれ伏せさせる。

 この場に絶対の闇が顕現した。

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