第14話
「……ッ!そ、そんな力が」
陽向も初めて聞く力を聞いて驚愕する。
他人との縁を繋ぐことが代償の力……陽向の脳裏に浮かぶのは自分の意識が闇へと落ちる前に見た温かな力、絶大な力を振るっていた亜蓮の姿だ。
「うん。そうなの……というか、多分私の考察があっていると思うの」
佐倉は己の仮説に核心を持っているかのように話す。
「じゃないと、私が今ここにいる理由がない。私にとって人体実験のための存在としてあることが当たり前で、別に何の不満もなかった。……なのに、何故か今。私は実験室を抜け出してここにいる。……どんなに考えても、実験室を抜け出した理由が出てこないの。出てくるものは不自然なほどにたくさんある。でもこれらの理由は私の理由じゃない」
佐倉は言葉を続ける。
「私が、あの時。望んでいたのは家族だけ。……もし、その人が私と同じ能力を持っているのであれば……私はその人を同類、仲間だと判断し、家族だと考えると思うの。似ている存在が家族だ!って思っていたから」
「……じゃ、じゃあ!」
「私と似たような能力を持っていた人が居たから、私はここに居る。抜け出したんだと思う。私は確実に亜蓮って人はいると思うの」
「……ッ!」
佐倉の言葉を聞いて陽向の表情に希望の光が灯り、表情を
陽向にとって一番の恐怖は、この世界に亜蓮が居ないこと。己の下らない妄想だったという結末。
もしいるのであれば、陽向に怖いものはない。居るのであれば、己を守ってくれるからだ。
「……もし。その力を。他人に忘れられるような力を使い、そのままドロンするようなお兄ちゃん……お仕置きしないと!二度と私を忘れられないように……私に忘れられていいなんて思わせない。許さない。あり得ない。家族なのに。妹のなのに。私のお兄ちゃんなのに。家族なのに」
有頂天となっている陽向の横で、佐倉がブツブツと呟き続ける。
「ふふふ……」
佐倉の笑い声は……狂気に揺れる陽向の瞳と同じ程の狂気を孕んでいた。
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