第12話

「ど、どうしたんだ……?」

 

 陽向の居なくなった天文学部の部室。

 そこに取り残された龍魔と佐倉が首を傾げる


「わ、わからない……」

 

 龍魔にも佐倉にも亜蓮の記憶はない。あるはずがない。

 

「亜蓮とか行っていたけど……何のことかわかるか……?」


「いや、わからな……」

 

 佐倉は龍魔の言葉を否定する途中で言葉を切り、思考を巡らせる。

 亜蓮なんて存在は知らない。

 しかし、佐倉の中に違和感があるのも事実だった。


「ん?どうかしたのか……?」


「う、ううん。なんでもない」

 

 龍魔の言葉を佐倉は否定する。

 

「そ、そうか……」

 

 佐倉の態度に当然龍魔は疑問を覚えるも、ツッコんだりしない。佐倉と言う存在には多くの謎があるのだから。


「……ん?」

 

 龍魔は佐倉について考え……小さな、ほんの小さな違和感を覚える。

 だが、その違和感が何なのか、情報の乏しい龍魔はその答えに至ることは決して無く、喉に骨が引っかかたような違和感が残り続ける。


「ちょっと、陽向お姉ちゃん追いかけてくる!」

 

「あ!?おい!」

 

 佐倉が天文学部を飛び出し、陽向のことを追いかけに行く。

 そして、残ったのは龍魔だけとなる。


「はぁー。また俺だけ除け者か」

 

 ただの一般人。

 龍魔は忌々しげに呟き、そして、諦めたかのように苦笑するのだった。


「……ん?なんで俺は主人公が自分じゃないって思ったんだ?」

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