第1話
「……寒い」
僕は一人、体を震わせる。
夜風が吹き、僕の体から一切の容赦なく対応を奪っていく。
「うぅ……」
今の僕は家無し、物なし、金なし。
明天の代償で全ての人から忘れられた僕は当然これまで通り家に住む事ができない。だけど、家に物を取りに行ったら、既に撤去された後だった。
大家さんの仕事は僕の想像以上に速かった。
まだ復興も進んでいないし、大家さんはアパートの方に来ていないだろう!って思ったのに、全然来ていた。
仕事熱心にも程があるよ……。
おかげで僕は死にかけているよぉ〜。
「しゃむいよぉ」
鼻をズルズルさせながら
ザーザーザーザーザー
これが晴れた天気であればよかった。
しかし、今日は大雨だった。
夜風だけではなく、雨も一緒して僕をいじめる。本当に死んでしまう。……僕が死ぬことはないけど。
「ゼロ様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!?!?」
僕が寒さで凍えていると、突如。上の方から声が聞こえてくる。
「ふぇ?」
僕は驚き、顔を上げる。
「何をしておられるのですか!?」
その瞬間に蹲った僕の体に人の体温が伝わってくる。
どうやら、僕は誰かに抱きかかえられたらしい。
「こ、こ、こ、こんなに冷えて……」
これ以上ないまでに冷えた僕の体を魔法で温めだした人、体制を変えたことでようやくその人の姿が見える。
僕を抱きかかえている女性。
2m近い高い身長に、肩まで伸びた黒いショートカットがよく似合うかっこいい女性だ。
着ている高そうなスーツが汚れることもいとわずに地面に足をつき、僕の体を温め続ける。
「あぁ……なんて言うことだ……」
女性は己の声と体をを震わせている。
「え……?なんで覚えているの?」
誰も覚えていないはずの僕の存在を覚えている女性。
「覚えているに決まっているじゃないですか!!!」
力強い言葉でそう話す女性。
だがしかし……僕はこの女性を知らなかった。
え……?何?普通に怖いんだけど……。
「???」
初めて会う存在を前に僕は疑問が尽きなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます