第45話

 土煙が晴れたその先。

 そこにいたのは無傷で佇む男の姿だった。

 

「……嘘」

 

 その男に握られている巨大な剣。

 それを弾いた僕。

 僕と男は互いに距離を取り、仕切り直す。


「……ッ!まさか!」

 

 僕は今、目の前にいる男をじっくりと見て、その驚愕の真実を知る。

 この男という人間の歩んできた歴史を見つけ、己の瞳に映し続ける。

 

 男……いや、ヨハネス。

 白い髪に赤い目を持ったアルビノであり、閉鎖的なアフリカの村で迫害を受けていた少年が成長した姿。

 身長は高いのだが、ガタイはそこまで良いわけではない。超巨大な剣を振り回しているようなヨハネスには全然見えないだろう。

 そのヨハネスの持っている力、感情、歴史……それらを見て、知ることのできる僕は驚愕に硬直する。


「……」


 記憶の中にあったとある一件以降、見えないことも多いのが、欲しかった情報は手に入った。


「君には見る才能があったのか」

 

 ヨハネスの人生。

 それを知った僕は驚愕とともに言葉を漏らす。


「おしゃべりなやつだ」

  

 ヨハネスは僕の心臓から剣を引き抜く。

 

 鮮血は踊らない。

 

 傷は一瞬で癒やされる。

 

「闇と闇がぶつけ合っても無意味だ。食い合うのようなことはない。ただただ重ね合わせるだけだ」

 

 ヨハネスに効くことのない僕の闇。

 それと動揺にヨハネスの闇は、僕へと決して届かなかった。 


「やばいかも……」

 

 僕は呆然とつぶやき、額に冷や汗を流した。

 今の手札にあるのは闇の力のみ……そして、目の前の男には闇の力が効きそうになかった。


 最期の切り札は……使いたくない。

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