第44話

「……ッ」


「……」

 

 いきなり現れた剣を握っている男と大きく斬り裂かれて血を吹き出させる僕。

 対象的な僕たちは視線をぶつけ合う。


「亜蓮ッ!?!?」


「お兄ちゃんッ!!!!!」


「嘘だろッ!?」


 三人の絶叫。

 そして、三人以外の人たちからの絶叫も上がる。

 


「死ね」


 

 そして、もう一度。

 僕の命を完全に絶つために振るわれる男の剣。

 迷いはなかった。


「暗天ッ!『藤』ッ!!!」

 

 僕は己が剣を抜く。

 剣と剣がぶつかりあい、僕の剣が男の剣を吹き飛ばす。

 

「……」

 

「……ッ」

 

 闇が降りる。

 

 絶対的な闇が。絶対的な魔が。絶対的な黒が。


 生命が怨敵が。生命が宿敵が。生命が己敵が。

 

 歴史の憎悪が。歴史の悲哀が。歴史の後悔が。

 

 生命の憎悪が。生命の悲哀が。生命の後悔が。

 

 地球の憎悪が。地球の悲哀が。地球の後悔が。

 

 地球と言う大いなる星の悪、闇の全てが力を手にした少年がこの場にその存在を荒れ狂わせる。

 直視できない。生命が齎し、貯め続けた生命の悪感情そのものを力として振るう存在に。

 そして、全ての生命が理不尽なまでの絶対的な怒りを覚える。


「後悔しろ。大いなる星の闇の領域にその身を浸したことを」

 

 全ての生命の敵となり、恐れられる代わりに手にした絶大な力を僕は目の前の男へと振るった。

 大いなる闇が、魔力そのものが男を包み込み、大きく土煙を上げてこの場を覆い隠してしまう。


「はい。終わり」

 

 僕の一撃を受けて生きていくことの出来る生命は存在しない。


「え?」

 

 そう慢心していた僕の心臓を一つの剣が貫いた。

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