第46話

 千日手。

 僕とヨハネスの戦いを表現する最も良い言葉がこれであった。


「……うーん」


 僕の一撃はヨハネスの有効打となることはない。闇による攻撃は効かず、闇を使わずに僕の持っている少量の


「クソッ……」


 それに対してヨハネスも僕に対して己の剣が僕に届くことはなかった。

 攻撃手段は闇でなく、膨大な魔力の元に振るわれる剣。

 これならば僕の体にも傷をつけることが出来るだろう……当たれば、の話ではあるけど。


 僕とヨハネス。

 素のステータスも。力によって底上げされたステータスも。

 両者ともに僕とヨハネスの間には絶対的な力の差があった。ヨハネスの速度では、僕を捉える事はできない。何百年と同じことを続けても同じ結果となるだろう。

 

 千日手。

 そう表現することしか出来ない。


「小賢しい……ッ!」

 

 足を動かすヨハネス。

 それに対して僕はヨハネスが動けないように自分の体を動かす。

 別に闇で傷を与えられなくとも、衝撃でズラしたり飛ばしたりすることなら出来る。

 

 ヨハネスは僕を諦め、他のみんなを狙おうと画策している。

 僕はそれを止めるために体を動かす。


「……ヌンッ!!!」


 ヨハネスによって振るわれる巨大な大剣。

 それは大きく大地を抉り、音速にも届きうる速度で迫りくる。


「……」


 そんな大剣を僕は余裕の表情で避ける。

 避ける。避ける。避ける。

 これくらいなんとも無い。余裕である。

 ヨハネスと異次元の戦いを演じていた僕はこれからどうするか、頭を張り巡らせる。


「……ん?」

 

 そんな時、僕は自分の体に違和感が走り、足をふらつかせる。


「待っ……」


「ようやくかッ!!!」

 

 動きを止めてしまった僕を、ヨハネスは一切の容赦なく吹き飛ばした。

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