第36話

 学校から離れ、そこそこの時間を移動した僕と陽向は目的地に到着し、その足を止める。


「……あれ?」

 

 そして、僕はそびえ立つ一つの建物を指さして首を傾げる。


「えっ。あ、うん。そうだね」

 

 そんな僕の言葉に対して陽向の困惑の言葉が返ってくる。

 

「ちょっと目立ちすぎじゃね……?」

 

 僕は自分の本当に率直な感想を漏らす。


「う、うん。そう、だね」

 

 裏で暗躍し続け、スタンピードのドサクサに紛れて大きな事件を引き起こした組織。

 政府が追いかけ続けた組織。

 そんな裏の組織の本拠地が。

 そんな闇の組織の本拠地が。

 そんな犯罪組織の本拠地が。

 

 こんなにも堂々としていることがあるの……?

 

 倒壊している建物の中、一つだけ無傷で堂々とそびえ立っている立派な建物。

 一つだけ無傷の建物とか、違和感が半端ではなかった。

 電気なんて物は既に止まっているはずなのに、窓から見える全ての光は着いているように見える。

 夜とかありえないほど目立つだろう。

 

 それに。この建物はこんな事態が起こるよりも前から有名な建物で、街で一番高い建物にして、用途不明で、今ここで名前を一般に言えない会社のものであるということしかわからない建物と言われていた。

 都市伝説が立つような、そんな建物が本当にやばい組織の建物だった……?どんあ冗談?


「……騙されているんじゃないか?」


「……上層部も嘘だと思って何度も確認させたらしいんだけど……それでもここだったんだって」


「舐めているのだろうか?……まぁ良いや。早く中に入っちゃおうか」


「う、うん。そうだね」


 疑問は尽きない。

 というか、疑問しか無い。

 ここが本当にこんなことを仕出かした組織の本拠地であるのならば僕が説教してやりたい。

 影の組織がどこよりも目立ってどうするのか、と。

 せめてこんなに目立つならもっと派手にやれよ。紫色の煙出すとか、禍々しい雰囲気の建物にするとかさ。

 陰の実力者を趣味でやっているものからしてみれば、あり得ないことである。


「ふんふんふーん」

 

 僕と陽向は組織の中へと入っていった。

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