第30話
スタンピード。
2023年に起きた世界的な大事件で、ダンジョンから大量の魔物が溢れ出してくるという事件があったのだ。
その被害は実に甚大。
発展途上国の多くは未だにスタンピードで溢れ出してきた魔物を全て討伐することが出来ていないし、アメリカ、中国、ロシアなど、先進国でも国土の大きな国では未だに人気のないところであれば完全に魔物を討伐出来たとは言い難い状況だった。
今回も現状を見ればその事件と同じように、魔物がダンジョンより溢れてきた事件であると考えられる。
しかし、一つわからないのはその被害の大きさだ。
魔物はダンジョンから出てくる。
小泉進次郎以外なら言わなくてもわかると思うが、魔物がダンジョンから出てくるということはダンジョンの近くに魔物が多くいるということなのだ。
そのため、ダンジョン近く……のだが、今はダンジョン近くも、遠いところも同じだけの被害を負っているように見えた。
それだけが僕には理解出来なかった。
「いや、わからん」
「「……え?」」
「いや、多分スタンピードだと思う、ダンジョンから魔物が出ていくのを見た!って証言もあるしな。……しかし、だ。話はこれだけじゃないんだ。いきなり魔物が現れたとか、殺された人の死体が紅くなって魔物に変わったとか、色々な証言がありすぎて、どれが本当でどれが嘘かもわからない。もしかしたら全部起きているのかも知れない……ま、ただの一般市民程度には何が起きているのか理解できないよ」
「そうか……」
僕は龍魔の方から陽向の方へと視線を向ける。
「だめ……未だ何が起きているのかわからないみたい。私の連絡にはただただ魔物を討伐するようにだけ命じられている」
「そっか……」
「お兄ちゃん」
「ん……?」
僕は佐倉に名前を呼ばれて、佐倉の方へと視線を向ける。
「……」
佐倉の言葉に返した僕の言葉。
それに対して佐倉は沈黙でもって答えた。
「ん?」
「……ううん。なんでも無いよ!」
佐倉は僕に対して笑顔を見せた。
「そ、そっか」
……何を言おうとしていたのだろうか……?まぁ、良いや。
「じゃあ、僕がするべきなのは魔物を殺しまくることだね」
「た、多分そういうことになるかなぁ……」
「よし。じゃあ、魔物を殺していこうか!明日から!」
僕は窓の外から見える……きれいなお月様を見ながら告げた。
「……確かにもう夜だな」
「寝るか……」
「ベッドは?」
「そんなものはない!」
「クソ……ッ!家にはないからこそほしかった……ッ!」
「なんで家にないものがここにあると思った」
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