第27話

 ダンジョンの外。

 そこに広がっていたのは地獄の光景だ。

 

 街に立ち並ぶ高層ビルは煙を上げ、窓が割れ、大きく損傷している。

 真っ二つに折れたり、壊れたりし、その瓦礫などが地面へと降り注ぎ、様々な物を破壊している。

 

 壊れているのは高層ビルだけじゃない。

 一番目についたのは高層ビルだが、他もひどい。街全体が大きな被害を被っていた。

 燃えている家屋。荒らされた花壇。窓ガラスが散っている地面。

 

「そ、そんな……」

 

 隣に立っている陽向が呆然とした声を漏らす。


「ぐるるるるるるるるるる」


 こんな事態を引き起こしたのは町中を我が物顔で歩いている魔物たちだろう。


「な、なんで魔物が……」

 

 大量に町中を歩いている魔物たちを見て僕と陽向はただただ呆然とその場に立ち尽くす。

 僕たちがダンジョンに入っている間に一体何が……?

 いや、とりあえず今は自分にでき。


「天皇陛下万歳ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいい」


「天皇陛下万歳ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいい」


「天皇陛下万歳ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいい」


「天皇陛下万歳ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいい」


「天皇陛下万歳ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいい」

 

 拳を握りしめ、魔物に殴りかかってボコボコにしていく人たち。


「魔物を殺せッ!愛すべき国民のためにッ!国家のためにッ!天皇陛下の御為にッ!」

 

「「「おうッ!!!」」」

 

 力強い言葉を上げ、己の体を叩き、奮い立たせる男女、人間。


「……え?なにあれ?」

 

 狂戦士と化した一般市民を見て陽向がドン引いたかのような声を上げる。


「天皇陛下万歳ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいい」

 

 それもそうだろう。

 天皇陛下万歳と叫んで何も持たずに魔物に殴りかかっているのだから。


「せ、成長したね……」


 1億玉砕……今ならや竹槍一本でアメリカ兵を撃退できそう。

 えっ……?何あれやば……。僕が育てておいてなんだけど。


「亜蓮と龍魔が育てた人たち……?」


「……ん。まぁ、そうだね」

 

 僕は陽向の言葉に頷く。


「亜蓮と龍魔は大日本帝国でも復活させるつもりなの……?」


「いや、今の現状は大日本帝国よりもおぞましいだろ、これ。桜花だッ!特攻だッ!とか言って生身で敵空母に突っ込んでいきそうな雰囲気あるじゃん」


「……確かに」

 

 色々な意味で凄すぎる光景を僕と陽向は呆然と眺め続けた。

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