第21話
「……おせぇ」
僕は大地を蹴り、刀を振るう。
振るわれる刀が僕の方へと襲いかかっていた虫の魔物を両断する。
「というか多すぎ!」
次から次へと僕の方に群がってくる魔物たちに舌打ちをうち、刀を振るい続ける。
両断された虫の体液が僕を濡らし、醜悪な匂いを撒き散らし続ける。ただただ僕に不快感を与え続ける。
「……シッ!!!」
体を回転させ、刀を振るう。
虫たちは己の仲間が死んだことなど一切気にしないかの如くただただがむしゃらに突っ込んでくる。
「……」
足を滑らせながら後方へと下がり、移動し続ける。
止まっていたらすぐに虫の魔物に補足され、囲まれてしまうだろう。
そうなったら刀一本で戦う僕は思うように動くことが出来ず、ゲームオーバーとなってしまうだろう。
「……動けよ!?陽向ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!」
「無理ぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!虫だけはッ!虫だけは嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!!」
僕が虫と戦い、ヘイトを全て集めている間。
陽向はダンジョンの壁の方で蹲って震えていた。
「最初の気合はどこだよッ!?」
人には好き嫌いというものがある。
当然だ。……だが、だからと言って僕が押し付けられて良い理由にならないと思う……!ダンジョンの時だけでも戦ってくれ……ッ!
結構ギリギリなんだよ!?
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
虫の魔物が使う毒、状態異常を齎す鱗粉……それらに決して触れないようにしながら僕は必死に戦った……戦い続けた。
鱗粉!?
「すぅー」
息止めッ!!!
■■■■■
「はぁ……はぁ……はぁ……」
多くの虫の魔物の死体が転がっているダンジョンの廊下の中。
僕は大きく息を切らし、疲労困憊となっていた。
「クソが……多すぎだっての!虫の魔物の数が普通にバグなんだよ。こんなの一人で捌ききれるか」
「お、お疲れ様……」
虫の魔物の死体がダンジョンに吸収され、きれいになった時。
今まで隅っこにいた陽向が僕の方へとやってきて、話しかけてくる。
「疲れたのは君のせいでもあるけどね?」
「……うぅ。ごめんなさい」
「これから先は陽向に今以上頑張ってもらうからね」
「うん!頑張るから捨てないでぇッ!」
「いや、捨てるって何?ほら、早く先に行くよ。僕はさっさとダンジョンを攻略して帰宅するぜ」
「うん!」
僕と陽向は先のダンジョンへと歩き始めた。
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