第20話

「……確かに初心者育成ダンジョンツアーはやりたくなかったけど、これを望んでいるわけじゃないよ」

 

 ダンジョンの中。

 僕は遠い目を浮かべる。


「一緒に頑張ろうね!」

 

 僕の隣に立っている陽向が笑顔を浮かべ、僕に話しかけてくる。


「……うぅ」

 

 それに対して僕が返すのは不満の声だ。

 

 今、僕は陽向と一緒にダンジョンに来ていた。

 隣に立っている陽向の服装は完全武装。勇者として与えられている武器、防具を全て着こなしている。


「なんでガチ攻略に僕を使うのさ……」

 

 とある一つのダンジョン踏破。

 それが僕と陽向の目標である。

 

「いやぁー。上層部は君が何か特別な力を隠しているんじゃないか?って疑っていてね」


「そんなものないんだけど……」


「まぁ、上層部も多分ないとは思っていると思うよ。でも、窮地に陥ったら覚醒するかもしれないじゃん。私も元々はただ他の人よりちょっと素のステータスは高いけど、一切魔法とスキルを使えない子だったから……とある事件があって、それによって勇者へと覚醒したの。だから、亜蓮も何か覚醒するのでは……?と」


「なんて迷惑な期待。そのせいで僕はダンジョンに潜らされているのか……普通に嫌になるんだけど……」

 

 ソシャゲしたい……最近ダンジョンに潜ってばっかりで全然ゲームすることが出来てない……一日一時間しかゲームしていないなんてありえない……うぅ。

 

「しょうがないでしょ!ほら!頑張るよ!」


「……はぁー」

 

 僕はやけに張り切り、闘志を漲らせている陽向を前にため息をつく。

 なんで陽向はこんなにもやる気に満ち溢れているんだ……?君も戦闘民族なの?


「ほら!ため息を吐かない!」


「……ちょっと陽向のやる気高すぎじゃない?……よし。さっさと終わらせようか」

 

 今から潜るダンジョンはそこまで深いものじゃない。

 ものすごく頑張ればちゃっちゃと終わらせることができるかもしれない……!


「行こっか……」


「はい!」

 

 沈みきっている僕とハイテンションな陽向。

 正反対の僕たちがダンジョンの中へと入っていた……。

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