第17話
「オラァッ!!!蛆虫共ッ!止めるなッ!足を止めるなッ!進めッ!進み続けろ、侍の、圧倒的戦闘民族たる大和の血を引いているのであれば根性の一つや二つくらい見せてみろッ!」
「「「イエス・マイロードッ!!!」」」
僕は鞭を振り回し、声を張り上げる。
「前方に魔物の気配ありッ!突撃ッ!」
「「「天皇陛下万歳ぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」」」
僕の一言。
それを聞いた大人たちが拳を握って全力で走り出す。
「あぁ……それで良い。良くぞここまで成長した……」
僕はそんな彼ら、彼女らを見て満足気に頷く。
「いや、そんな満足そうにするなよ……普通に狂気だろ。これ。どうなってんだ……」
「いいじゃんか、別に。みんな成長したい!って言ってたし。ちょっとボコボコにして奮い立たせて、魔物にけしかけているだけじゃん」
「やり口が鬼畜なんだよ。お前の生きる意味は魔物を倒すことだけだ!辺りから洗脳しているようにしか見えなくなっていたよ……女性であっても一切容赦しないし。女捨てているじゃんか。全員。化粧が大変なことになって怖いわ」
「え?ほら、今流行りの男女平等だよ?女だって這いつくばらせて血反吐を吐いてもらうんだよ?別に何もおかしなことしていない!」
「いや……レディーファーストとか女性専用車両とか普通にあるし、実体は自分の人生に不満のある俺らの母親世代の人間が自分以外の人間に上手く行かなかった責任をぶつけて発散しているだけで……こんなことを容認するための言葉じゃないと思うぞ」
「実体とか別に興味ないよ。僕に必要なのは女も引きずり回すための口実だよ。何言っているの?」
「……お前のその割り切りの良さは普通に恐怖」
「え?……というか、龍魔だってそれを実体だ!って言い切るのもどうかと思うけど?」
「まぁ、それはそうだけどな。でも男女平等は女を引きずり回すための口実のものでは絶対にない」
「むぅ」
僕と龍魔は男女平等についてゴミのような会話をしながら、拳で魔物と乱戦を繰り広げている人たちを眺める。
みんな血だらけになりながら、己のこぶしを握り、笑いながら出血している拳を魔物に振り下ろしている。
こころなしか魔物の顔が恐怖に慄いているような気がしてくる。
「……というか、なんで拳で戦わせているの?」
「それになんかあったとき、本当に頼りになるのは己の体だよ?」
「それはそうなんだが……納得がいかんよ。俺ら学校勢(で・より)も遥かにキツイことやっているんだよ。なんだったらどんな冒険者もキツイだろ。これ。お前は狂戦士を育てあげてどうするつもりだ?」
「一億玉砕?」
「絶対に辞めろ」
僕と龍魔は不謹慎すぎる会話で盛り上がりながら狂戦士と化した大人たちを扇動したのだった。
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