第12話

 授業も終わり、放課後。

 普段であれば家に帰り、着替えてから公園に向かってカタツムリを採取してモグモスしている時。

 そんな僕は今、学校に残っていた。

 今、いる場所は天文学部の部室……普段は決して使われること無い部室である。

 

「さて、と!お兄ちゃん!」

 

 僕が自作した魔力を利用する望遠鏡を背後に、椅子の上に立つ佐倉がビシッと僕を指さしてくる。


「お金の重要な話をするんだよ!」

 

「おう。するべきだろうよ。こいつは生活費まで課金に回す男だからな」


「……もっといい生活を……!」

 

 椅子の上に立つ佐倉の言葉。

 それに椅子に座っている龍魔と陽向が同意する。

 

 椅子という高級品を使わせてもらっている三人に対して、僕は一人床の上で正座させられていた。


「むぅ……別に生きていくことが出来ているのだから良いじゃないか!」

 

 僕は三人に対してそう反論する。


「いや、家賃以外の金を全て課金に突っ込み、そこらへんのものを拾って食べているお前は少なくとも健常者ではないぞ」


「むぅ!」

 

 龍魔の言葉に僕は頬をふくらませる。


「一体親は何をしているんだ……」


「親は僕のことなんて覚えていないよ!ふんす!僕の財源も株を使って得たものだからね!」


「……あぁ。すまねぇ。忘れていた。お前に家族の話は地雷だったな……」


「え?地雷扱いなの……?僕」


「忘れてくれや」


「ん?じゃあ、そうする」

 

 僕は龍魔に言われたように地雷扱いされたことを忘れる。


「……ァ?ん?」

 

「それで?」

 

 首を傾げ、混乱しているように見える龍魔を横目に僕は佐倉の方へと視線を向ける。


「お金に関しての重要な話って何?……僕は課金額を減らしたくないんだけど」

 

 課金とは食事であり、水であり、空気なのだ。課金の無い生活なんてとてもじゃないが考えられない。

 課金をすれば欲しいキャラが手に入るんだよ?出るまで引けば確率100%なんだよ?

 課金するしか無いじゃないか。


「お兄ちゃんを悲しませるようなことを私はしないよ!もう!お金がないなら簡単だよ!稼げば良いんだよ!稼げば!お兄ちゃん!ダンジョンに行こう!そこでお金を稼げば良いんだよ」


「え?」

 

 僕は佐倉の言葉に首を傾げる。


「ダンジョンで魔物を倒して、魔石をとって売れば……お金になるんだよ!それで食事代を稼げば良いんだよ!」


「えぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええ!?そうなの!?ダンジョンで魔物を殺すとお金がもらえるのぉ!?」


「いや、なんでお前は知らないんだよ」


「うんうん」

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