第10話

『えっと……そっちの方に佐倉いるかな?』


「うん。いるかな」


「んー。カタツムリくん。美味しい……でも栄養素が足りていないよねぇ」

 

 地べたに置かれたフライパンの上に乗っかっているカタツムリを美味しく頂いている佐倉を眺めながら通話先である陽向の言葉に返す。

 今、陽向と僕の家になんか来てしまった佐倉についての会話を行っていた。

 陽向から僕に慌てたような電話がかかってきたのだ。


『ま、マジかぁ……脱出に手を貸していないよね?』


「僕から差し出したのに自分で脱出させるってやばいよね。気まぐれにもほどがあるでしょ」


『ま、まぁ……そうなんだけどぉ』


「わかってくれたのなら何よりだよ」

 

『それじゃあ、あの子が自力で脱出してきたの……?一体どうやって?』


「さぁ……?僕もわからないんだよね。普通に考えたら脱出出来るはずがないんだけど……方法聞いてもはぐらかされて教えてくれないんだよね」


『そうだよね……本当に何なんだろうね?』

 

「『うーん』」

 

 僕と佐倉は一緒に首を傾げる。

 本当にわからない。何をどうしたらただの五歳児が脱出出来るの……?結構あそこから脱出出来るの大変だったと思うんだけど。

 世界の中でもトップクラスだと……本当に意味がわからない。


『……あの子をどうするか。国の方でも困っているのよ。ちょっとだけあの子を預かってくれない、かな?』


「あぁ……うん。良いよ。なんか佐倉ってびっくりするくらい僕に執着しているからね。ちなみにだけど養育費を貰えたりはしない……?」


『あぁ、多分くれると思うよ……でも、ゲームの課金に使っちゃ駄目だよ?』


「うっ……」


『じゃあ……そういうことでお願い出来るかな?」


「うん。大丈夫だよ。任せてー」


『ごめんね。お願い』


「うんー。じゃあね。また明日」


『うん。また明日ー』


 僕は陽向との電話を切る。


「口臭いお姉ちゃんとの電話終わったー?」


「うん。終わったよー」


『smrfpanakizhnalsiJnqreilawAhsng qaowizskgaebysizxk,c.dahsbpa;o/xl;aiguo*'`b』

 

 切れていなかったスマホから陽向のよくわからない声が響いてきた。

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