第8話

「……佐倉を?陽向が連絡して結果来た人間かな?」


 僕は彼ら、彼女らが一体何者なのかを察する。

 多分保安なんちゃらの人たちだろう。


「あぁ。そうだね。……何故君が国家機密である我々の存在を知っているのか、疑問しか湧かないが。まぁ良いだろう。君という存在は我々でも掴めていないイレギュラーであるからな」


 僕の言葉に対してスーツ姿の男性は苦笑しながらも、僕の言葉を肯定する。


「君の想像通りの連中が勇者の連絡を受けて、正体不明の存在を回収しに来た」


「なるほど。了解……だけど、佐倉を丁寧に扱ってね……?佐倉の身に危険が迫れば僕がわかるようになっているから。もし……佐倉の身に何かあれば僕も動かざるを得なくなっちゃうから」


「……留意しておこう」


「うん。そうして。じゃあ、はい」


「ッ!?!?」

 

 僕は佐倉の首根っこを捕まえて持ち上げ、スーツ姿の男性へと引き渡す。


「お兄ちゃん!?……私を差し出すの!?なんで!?いやーよ!!!一緒!ずっふご!」

 

 喚く佐倉の口に自分の指をぶち込んで喋れないようにしてやる。

 佐倉も僕のところに育てられるより、国の保護化にあった方が良いだろう。それに、こんな爆弾のような正体不明な存在をうちで引き取りたくない。

 普通ではなくなってしまう!


「ふご!?ふごっ……ふごぉぉぉぉぉ!!!」


「ということでどうぞ」


「あ、あぁ……」

 

 スーツ姿の男性は少しだけ引きつったような笑みを浮かべて、佐倉を受け取る。


「おにい……ふご!?」

 

 佐倉の口には僕の指の代わりに布があてがわれる。

 

「それでは協力感謝する。この子は我が国が責任を持って預かろう」


「うん。お願いしますねー」


「それでは」

 

 スーツ姿の人たちが、ボロアパート前に停められている黒塗りの車へと乗り込んでいく。


「ふごッ!ふごッ!ふごぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「ばいばーい」

 

 僕は離れていく佐倉並びにスーツの姿の人たちに手を振って、見送った。


「よし、と。今日の夜ご飯もカタツムリでいいや」

 

 僕は静かになったボロアパート前から自分の部屋の中へと入っていた。

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