第7話

「案外なんとかなった」


「明日も一緒に行くー!!!」


「うん。まぁ、良いよ。今日も大丈夫だったし」

 

 高校からの帰り道。

 僕は佐倉と一緒にのんびり歩いていた。

 

 五歳児くらいの女の子と一緒に高校にやってくるという前代未聞の行為。

 だったのだが、結構すぐに受け入れられた。

 佐倉が授業中はしっかりと静かにしてくれていたおかげで、授業の邪魔にはならなかったし。学校側もつい最近あった大きな襲撃の爪痕が残っていて、生徒の一人が子供を連れてきている程度で騒いでいる余裕がなかった。

 

 これらの理由より、佐倉は高校に居て先生に何も言われなかったのだと思う。

 襲撃のときに大きく活躍した陽向の友達でもあるしね。僕は。


「今日の夜ご飯は何?」


「んー。何にしようか。……龍魔に良いものを食べさせてあげろって言われたし、なけなしのお金で何かちゃんとした食材を買って料理しようかな」


「おぉー!」


 僕と佐倉は他愛もない会話をしながら道を歩く。


「……ん?」

 

 そんな僕たちの家であるボロアパートの前に明らかにボロアパートには不釣り合いな黒塗りの高そうな車が止まっている。

 そして、僕の家の玄関の扉の前に多くの人たちが集まってくる。


「どなたですか?」

 

 僕は自分の家の前でたむろしているスーツ姿の大人の男女に声をかける。


「……君が亜蓮君かな?」

 

 スーツ姿の男性が僕の質問に対して質問を返してくる。


「人に尋ねるときは自分からでしょ?……いきなり部屋に押しかけてきている非常識な人間に自分の名前を当てられるとか怖いんだけど……?僕が亜蓮であっているよ」


「そうか。それは良かった……我々の非常識な行動には目をつむってくれると非常にありがたい。こうせざるを得ない理由があるのでな」


「なるほど。じゃあ、その非常識な行動には目をつむってあげるよ」


「感謝する」


「それで?一体僕に何の用なの?」


「我々の要件は非常に簡単だ。今、君の隣にいる少女。その子の身柄を渡してほしいということだ」

 

 スーツ姿の男性は佐倉を指さした。

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