第3話

 有本佐倉を名乗る幼女が僕の家にやってきた次の日。


「……は?」


「ちょっ……?」


「一体誰だよ!?頭の上の」


「デュフフフフフフフフ。幼女でござるござる」


「学校に部外者つれてきてい良いの?」


「かわいい……」

 

 高校のクラス。

 そこに僕が登校してきた瞬間。

 クラス中が騒然としだす。

 その理由はたった一つ。たったひとつのシンプルな答えだ。


「おはよぉー!!!ここがお兄ちゃんのクラス!」


 僕の頭の上に乗っている佐倉が理由である。


「みんな初めまして!」

 

「ちょっと、静かに……」

 

 僕は元気に頭の上で空を揺らして動かしている佐倉に動かないように頼む。

 頭がぐわんぐわん動かされる。本当に嫌である。


 有本佐倉。

 昨日は一緒にカタツムリを食べて、布団のない部屋で抱き合って暖を取って眠った僕と佐倉。

 

 たった一日で慣れて共同生活を送っている佐倉が一緒に学校へと行きたいと駄々をこねて、無理矢理にでもついてきてしまったのだ。

 それにあんな部屋に一人佐倉を残していくわけにもいかない。

 五歳児を家で一人待機させるとか普通に虐待である。


「なんで急にそんな小さな少女を持ってきた!?」

 

 佐倉をつれてきた僕に龍魔が驚き、近寄ってくる。


「というか、誰だよ!?その子……」


「お子さん?おめでとう?」


「いや、子供作るのにはあまりにも早すぎるだろ。まず候補は妹とか従姉妹でしょ」


 僕は随分とズレた陽向の言葉にツッコミを入れる。


「おーい。HR始めるぞー」

 

 そのタイミングで山見先生が教室の中へと入ってくる。


「って。誰だ?そのガキは。おい。亜蓮。お前……学校にガキを連れてくるなよ」

 

 クラスへと入ってきた先生が僕に避難の視線を向けてくる。


「ママー!!!」

  

 佐倉が山見先生へと素晴らしい笑みを浮かべて手を伸ばす。

 

「はぅあ!?」

 

 それを受け、山見先生の体が雷に打たれたかのように大きく震える。


「教室にこの子を居させるのを認めよう。うん」


「「「先生ぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」」」

 

 独身未婚女性の哀愁と寂しさ。

 子供を求める心は非常に強かった。


「へっ」

 

 ……佐倉。

 ちょろい女だぜ!みたいな感じで笑わないで?ちゃんといい子に育って?

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