第1話

「ふんふんふーん」

 

 僕は公園で拾ってきたカタツムリを炒めていく。

 生のカタツムリには『広東住血線虫』という寄生虫がいるため、食べたら死んでしまうのだけど、熱したらなんの問題もない。

 

 フランスではエスカルゴのようにカタツムリを食べる食文化がちゃんとある。

 カタツムリはものすごく美味しいのだ。

 

 カタツムリが多く採れる梅雨はごちそうの季節である。


「よし」

 

 バターとにんにくとそこらへんの雑草を炒めて作ったエルカルゴが完成!

 普通にバターは高いけど、自分の近所の人が牧場を持っていてバターとか牛乳とかをおすそわけしてくれるので、乳製品は手に入れることができる。

 にんにくは自分で育てている家庭菜園クオリティーである。


「んー。美味し」

 

 フライパンに置かれたままのエスカルゴを頬に含み、表情を和らげる。

 本当に美味しい。絶品である。


 ドンッ!!!


「ほえ?」

 

 僕が美味しくエスカルゴを食べている時。

 家の扉のドアに強い衝撃が加わっていく。


「……ッ!?!?」


 待って!?うちの玄関の扉は決して頑丈じゃないんだよ!?そんな衝撃与えないで!壊れちゃうから!

 

「よっ」

 

 僕は慌てて立ち上がり、玄関の方に向かう。


 ガチャ……。

 

 そして、勢いよく玄関の扉を開けた僕。


「あぅ!?」


「……は?」

 

 玄関の扉。

 その外。

 そこにいたのは一人の少女。

 まだ幼い、5歳くらいに見える小さな少女の姿がそこにはあった。

 肩まで伸びた黒髪に、パッチリと大きな黒い瞳に、小さな子特有のぽっこりお腹の幼児体型の可愛い少女。


「え?な、なんでこんなところに幼女が?」


 何故にこんなボロアパートの……壊れてしまいそうな玄関の扉に幼女が突っ込んでくるんだ?

 別にこのアパートに子供は住んでないし、引っ越してきた人もいないはずだけど……?

 目の前の幼女を前に僕は首を傾げる。


「お兄ちゃん!!!」

 

「は、はぁ?」

 

 なんでこんなところにいるかもわからない幼女は……何故か僕のことをお兄ちゃんと呼び、勢いよく僕に抱きついてきたのだった。


「……はぁ?」

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