第二章

プロローグ

 世界で最も深い闇。

 そこはどこにあるか。

 ナチスが如く多民族を虐殺し、発展し続けたアメリカか?

 独裁が続き、戦争と言う狂気に身を浸すロシアか?

 数多の犯罪を犯し、急成長を続ける中国か?

 神の名の元に他民族の土地を奪い、世界最強とすら呼ばれるイスラエルか?

 全ての行いを神の名を免罪符として、多くの罪を秘匿し続けるバチカンか?

 否。否。否。

 それは軍隊を持たぬ平和な国と嘯く日本国にある。

 

 何千年間たった一つの一族より統治され、人ならざる者と戦い続けてきた国家。

 第二次世界大戦において帝国を名乗り、他国へと侵略した国家。

 当時、世界一と言っても良いまでの科学力を誇っていたナチスドイツの技術と科学者を受け入れ、ヒトラーのほら話であるラストバタリオンを現実のモノとすべく日本の奥深くで研究していた大日本帝国の残党。

 

 混迷期の中国から大量に『人間』を買って多くの人体実験を行ってきたその残党は。

 世界最悪の闇となって……ずっとそこに存在していた。

 

 存在理由も、組織の頂点も……姿を大きく変え、ただその科学力だけは保持し続けたその組織は今日もこの世界で暗躍し続けていた。

 

「まさか……何故だ何故だ何故だ……ッ!」

 

 北海道の辺境の地の遥か地下。

 金銀財宝が集まれ、ありとあらゆる贅が施された一つの部屋で一つの不安定な人影が忌々しそうに言葉を漏らし続ける。


「あれが敗北した……?あの力は、あの力は、あの力は間違いない。私があれを間違えるはずがない。何故だ。何故だ。何故だ。ずっと……ずっと眠っていたはずだ。眠っていたはずなのだ……ッ!それなのに何故ェェェェェェェエエエエエエエエエエ」

 

 揺らめく人影が。

 その影の中に轟く激情を反映させているかのように激しく動き続ける。


「まだだ……まだだ……まだ……片翼だ。知らねば。知らねば。知らねば。アレは何なのだ」

 

 人影が蠢く一室。

 そこに、一人の人間が入ってくる。


「ボスッ!129番が行方不明ですッ!」


「だっはーんッ!?」

 

 人影の間抜けな声がこの場に響き渡った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る