第39話

 膨大な。

 あまりにも膨大すぎる力がこの場を埋め尽くす。


「……ッ!?!?」

 

 黒ローブの男は弾かれたように跳躍して僕の方を睨みつけてくる。


「あっ……」


「ぃあ……」


「ひっく……ひっく……」


「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」

 

 逃げていた生徒たちの足が止まる。

 足が嘲笑って動けなくなり、へたれこんでしまう。

 固まる者、涙を流し続ける者、壊れたように嗤う者。


 ほのかなアンモニア臭がこの場に立ち込めてくる。


 ブリッ!ブリリリリリリッ!


 脱糞ッ!?!?

 この場に響き渡った大きな音を聞いて僕は驚愕する。

 おしっこを漏らすなら理解できるが……うんちまでもらすん?そんなことあるの……?


「……」

 

 僕は静かに消臭の魔法を発動して、匂いを消す。

 おしっことうんちの臭い……不快な匂いを消してやる。


「な、何者だ……?て、てめぇは……ッ!」

 

 恐怖で体を震わせながらも強烈までの殺気を振りまいて僕を睨みつけてくる男へと僕は視線を送る。


「んぐッ!?!?」

 

 僕の視線を受け止めた男は恐怖にその表情を引きつらせて、体を硬直させる。


「暗天『藤』」

 

 僕の右手に漆黒の刀が握られる。


「……んうごッ」


「我が何者か……」

 

 一歩。

 足を一歩踏み出す。

 

「ァ?」

 

 距離という小さな概念を飛び越えた僕は男の後ろに立つ。


「汝を殺す者……知っているのはそれだけで構わぬだろう」

 

「……あっ」

 

 光を一切受けつない漆黒の刀が暗闇を作り出す。

  

 コツッ

 

 誰も知らぬ間に落とされた男の首が地面を転がっていく。


「ふん」

 

 僕は転がっている男の首へと足を踏み降ろす。

 吐き気を催すような嫌な音とともに男の首は潰れ、真っ赤な液体を地面へと流

して汚す。

 床に赤い染みを残し、肉が残る。

 が流れ行く。


「あなたは……ッ」

 

 そんな中。

 僕の前に女が……陽向が現れる。


「汝は己が為に……勇者の名に恥じぬようにな」

 

 僕は自分の体を闇へと落とし……スタイリッシュにこの場から離れた。

 

 秘技!忍者走り!にんにん!

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