第37話

「ほ、本当に平気なのか……?」


「うんー。まぁ、比較的平気かな」


 僕は血だらけの腕を動かして、先生に答える。

 血が撒き散らされ、修練場を汚して行く。


「そ、そうか……良いか。自分の体を大事にな?」

 

 血を撒き散らし、痛々しい姿を晒していながらも平然としている僕に対して先生は少し引いているかのような表情を見せる。

 ……ん?僕がそんな表情を向けられる謂れはないんだけど。

 別にこれくらいであればそんなに致命的ではないでしょ。


「当たり前だよ。……これ以上戦うのは流石に無理なので、自分はここでドロップアウトするね」


「あ、あぁ。そうするべきだ。今すぐにでも君は休んだ方が良い」


「はい。保健室に行ってくるーみんなも気をつけてねー」

 

 僕は一人、保健室に向かう。

 血を撒き散らして進む僕に呆然としているクラスメートを置いてぼりにして。


 ■■■■■

 

「ふー」

 

 僕は一言息を吐き、保健室のベッドに腰掛ける。


「真っ赤ッ!」

 

 僕の血で真っ赤に染まっていく保健室のベッドを見て僕は笑う。

 ここまで真っ赤に染まっていくとは……結構血って染みるんだね。


「良しッ!」

 

 誰も居ない保健室で僕は魔力を開放する。

 全てが生命にどうしようもないまでのを植え付ける恐ろしい力を。

 

 魔力が傷だらけの僕の体を治し、魔力が服となった僕の体を覆う。

 

「んっ……」

 

 魔力を操作して良い感じに全方位に撒き散らしているを他の人には感じられないように上手く制御する。

 もうこの力を手に入れてから長い時間が経っているこれくらいのことなら出来るようになっていた。


「さぁ……暗躍の時間と行こうか」

 

 僕は一人、嘲笑った。

 

「どのタイミングが一番カッコいいかなぁー」

 

 

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