第31話

「クソ……」


「早すぎッ……」


 龍魔と有本さんが拳を、足を振るう。

 それを僕は手も使わず、体をよじらせるだけで全て回避する。


「まさかあんな大事件が起こるとは……」


「そうだね。無差別テロが行われるとは……ちょっと予想外かな」

 

「……そう、ね。これ、もう沈黙して居られないんじゃ……」


「陽向。沈黙とか言わない方が良いよ。どこに誰の目があるかわからかないから。まだ、沈黙を続けているのだから」


 大分怪しい……危険な話をしている陽向に対して僕はそう話す。

 

「あっ……ごめん。ん?あれ?……なんで私の言おうとしていたことがわかったの……?」


「ん?それは秘密だよ?」

 

 疑問符を浮かべている陽向に対して僕は簡潔に告げる。 

  

「クソッ!何余裕ぶっこいていやがる!」

 

 のんきに陽向と会話をしている僕に対して龍魔が激高して、怒りをぶつけてくる。


「だって、君たちが弱すぎだもん」

 

 僕は自分に向かって伸ばされている龍魔の腕を掴み、背後から迫ってきていた有本さんに向けて龍魔を投げ飛ばす。


「ほら!もっと頑張って!」

 

 重なり合うように対して倒れている龍魔と


「クソッ……」


「ちょっ、お、重い……退いて……」


「あぁ!すまん!」

 

 そんな龍魔は有本さんの言葉を聞いて


「ふ、ふたりとも……頑張って!」


「ん?僕への声援は?」


「あっ……もちろん頑張って!」


「いや、お前は要らないだろう……ガァッ!!!」


「にょいしょー」

 

 言葉の途中で掴みかかってくる龍魔を投げ飛ばす。

 

 世界最大級のテロ事件という大事件があったその日。

 例え、そんな日であったとしても学校は、日本は、当事者やその家族を除き通常通り各々の仕事、やるべきことを行っていた。


 今、僕たちは学校にある修練場で徒手空拳の訓練を行っていた。

 僕が相手しているのはの龍魔と有本さんの二人。

 陽向は僕と龍魔と有本さんの戦いを遠くから眺めていた。

 

 技術には圧倒的な自信がある僕は二人を相手取っても余裕で完封することができていた。


「はい!一度しゅうごー」

 

 先生の声がこの場に響き渡った。

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