第30話

「こんなことが……」

 

 有本さん今、授業を中断して流されているニュースを見て呆然と呟く。

 

『今朝、最も人の多い時間帯で起きた卑劣な無差別テロ事件……死傷者の数はどれだけ低く見積もってもあの9・11を上回るとされており、今も多くの負傷者が病院に運ばれています。現在、多くの人が行方不明となっており、明らかに人が少なく、捜索が続けられて居ます」

 

 今、画面に映されているのは地獄絵図となっている東京都心の中継だった。

 

 起きたことを説明するのは非常に簡単だ。

 魔法によって姿が隠されていた飛行機が東京都心に幾つもツッコミ、そこから降りてきたダンジョン探索経験者が無辜の人々を虐殺して回ったのである。

 

 その人たちは僕がサクッと生け捕りにして、転がしておいた。

 ついでに絶対に死ぬ状況で、苦しんでいる人たちがこれ以上苦しまないように止めを刺してあげたりもしてきた。


「ひどい……」


「そんな……」

 

 ニュースを見ているクラス

 どこのクラスでも同じようなことになっているだろう。

 今、この学校からは不気味なほどにニュースの音しか聞こえてきていなかった。

 

 学校の彼ら、彼女らは皆、ニュースの釘付けだった。

 いや。

 いや。

 いや。

 日本全土が起きたテロ事件に注目し、政府並びに日本国特務機関もそのテロ事件の対応に追われていた。

 

 だからこそ、ここに近づいてくる悪意に気づけた者はたった一人だけだった。

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