第22話

「ちょっ!?」

 

 僕は直ぐ側にまで近づいてきた犬っころに驚き、鋭い前蹴りを放ち、吹き飛ばす……。


「……へぇ」

 

 そうとうしたのだが、上手く行かなかったのだ。

 僕の蹴りは犬っころの強靭な顎に掴まれる。


「よっと」

 

 僕は刀を抜き、犬っころの顎を切り裂く。


「んしょ」

 

 顎の力が弱まったところ、自分の足を引き抜いてその場から一歩退く。


「ヤァッ!!!」

 

 僕が犬っころから離れたその瞬間。

 隣に立っていた陽向が大地を蹴り、犬っころとの距離を一気に詰めた。


「ほえ?」

 

 それを見て僕は驚愕に固まった。

 魔物に対して素早く反応し、行動に移った。

 それくらいなら別に驚くことでもない。

 僕が驚いているのは今の陽向の状態。勇者としての力を全力で発揮している陽向の状態だった。


「死ねッ!!!」

 

 殺意を漲らせ、勇者としての力を最大限発揮した陽向の一撃は、容易く犬っころの命を奪ってみせた。


「すっご……」


「「は?」」

 

「だ、大丈夫!?」

 

 犬っころを瞬殺した陽向は大慌てで僕の元にやってきて、心配そうに呟く。


「ん?……あぁ、大丈夫だよ」

 

 僕は無傷の足を見せる。


「良かった……」

 

 それを見てホッとしたように陽向が息を吐いた。


「何もかもがわからん。なんで無傷なん?何?陽向の圧倒的な力。この二人だけ別次元すぎんか?」


「……この世界には私たちの想像の範疇を超えている奴らがたくさんいるってことね」

 

 そんな僕たちの様子を見ていた龍魔と有本さんが困惑のまま声を漏らす。

 ……色々言いたいことはあるけど……今、気にしなくちゃいけないのは変な犬っころについてだ。


「何なんだろう……こいつ」

 

 僕は犬っころを。

 他の、さっきまで倒していた犬っころとは明らかに違う存在感と見た目をしている犬っころを見下ろして首を傾げる。


「えっと……わからないけど、とりあえずは国に連絡した方が良いかも……ダンジョン内で何かあったら連絡しておかないと」


「ん。じゃあ、連絡しておこうか。お願い出来るかな?」


「はい!」

 

 陽向がスマホを取り出し、どこかへと連絡を繋げて話し始めた。

 ここらへんのことは勇者である陽向に任せておいた方が良いだろう。

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