第14話

「そ、そんな……」

 

 陽向は驚愕に身を震わせ、己の表情を恐怖の色で染め上げている。


「わ、私は……距離感を間違えた、の?友達との距離感を間違え、いきなり踏み込みすぎて引かれるようなムーブをして、いた?」

 

 僕と龍魔の普通の友達関係について教えてもらった陽向はこれ以上ないまでに体を震わせている。


「異性同士の友達だと特にそうじゃないか?お昼一緒で、登下校一緒で、毎日家に遊びに来ていて、寝落ち通話しているんだろ?付き合っているようにしか見えないぞ……同性同士でもここまで一緒は珍しいだろ。親友の域だろ、これ」


「これくらいは、すると……聞いているけど」


「いや、するが毎日じゃないし」


「あ……ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああ」

 

 陽向が口からうめき声のような物を漏らして崩れ落ちてしまう。


「私はキモいんだ……だから友達なんて出来なくてぼっちなんだいつも一人なんだ一人でご飯食べて一人で登下校して一人で遊んで誰とも会話しなくて一人ぼっち友達たくさんの人たちを羨んでリア充を羨んでキラキラした人たちを羨んで私は何も言わずに草の影に隠れて何もせず何も出来ずに友達なんて出来ずに私は死ぬまで一人で一人寂しく孤独死するんだ当然だこんなキモくていいところなんて何もない被害妄想自己中躁鬱コミュ障空気の読めないネガティブブサイクなんて生きる価値なんてない」

 

 膝から崩れ落ちた陽向はものすごい暗い表情でブツブツとつぶやく。


「あぁ……死のう」

 

 そして、陽向はまるで憑物が落ちたような清々しい表情を浮かべて呟いた。

 陽向の瞳から涙を流す。


 なんで陽向はこんなにぼっちを拗らせているの?転校初日は沢山の人に囲まれていたし、勇者だし色々な人と関わっていそうだけど。


「おいおい!?死ぬなよ!?そんな気にすんな。こいつは頭おかしいから他人を嫌うなんてことをしないから」


「ァ?」

 

 誰の頭がおかしいだと……?喧嘩を売っているのか?

 喧嘩を売られたのか?今……僕は。


「頭おかしいだろ!いきなり刺してきた通り魔を許して仲良くなって改心させ、通報もせずにそのまま開放したお前が普通なんてことありえないから!お前はこころが広すぎるんだよ!何の躊躇もなく暴言を吐くクソ野郎とかにも優しくて仲良くなるとか正気の沙汰じゃねぇよ。お前の友達なんか全員ツンデレ見たいんになっているじゃねぇか!」


「みんなのことを悪く言うのよ!ひどいじゃないか!別にそれくらい何も問題ないでしょ?」


「多有りだわ!」

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