第10話
「……何者かしら?」
「礼儀のなっていない女であるな。人に名を尋ねるときは自分からだと知らぬのか?」
僕はそう吐き捨てた後、玲奈さんから視線を外す。
長いことを話していると何かボロを出すかも知れない。僕はただただなんか面白そうだから来ただけであり、今ここで何が行われたのかこれっぽちもわかっていないのだ。
改造ダンジョンコアが壊れ、あの男が消えちゃった段階で僕は結構焦っているのである。
「……あなたのような怪物に対する礼儀なんて持ち合わせていないわ」
玲奈さんは一切油断せず、僕の背中をただただ眺めている。
さて、と……。
どうやって退場しようかなぁ。終わりよければすべてよしとも言う。カッコよく、エレガントに退場したい。
「下らぬ物言いだ。実につまらぬ」
僕は静かに……禍々しい笑みを浮かべる。
「……くくく、我を怪物と呼ぶか。何も知らず、己が思うがままに動く汝らのほうがよほど怪物と呼ばれる者だろう」
「何も知らず、ですって?」
僕の言葉に玲奈さんが噛み付いてくる。強い憎しみを込めて。
「汝らは何も出来ぬ。ただただ無垢な我の道化として踊るのみよ」
ゆっくりと僕は歩き始める。
陽向と玲奈さんの元から僕は離れていく。
「……あぁ。そこで転がっている女を大事にすると良い」
僕はそれだけを言い残してこの場を去った。
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