第11話
「一体何者なの……?あれは」
玲奈は居なくなった謎の……人の皮を被った『何か』が立っていた場所を呆然と眺める。
「わかりませんが……恐らく味方だと……」
何者なのか。
それに対して陽向はそう説明する。
西園寺が姿を隠している状態の彼に出会うのは計二回。
一回目は西園寺の暴走を止め、二回目は今。この場で西園寺のことを助け、勇者としてのあり方を教えてくれた今だ。
やったことだけを見れば西園寺の味方であると考えても良いだろう。
「味方……あれが?ありえないわ。あんなのものが我々の味方のはずがないじゃない。あんなのものがこの世界にいるなんて……理解出来ないわ」
「な、なんでそこまで……?」
あんまりな玲奈の評価に対して陽向は首を傾げる。
「……?あなたがアレの味方になっているのが理解出来ないのだけど……。感じられなかったの?あの禍々しい絶望的な気配を」
「え?」
本来。
全生命に畏怖を……怒りを……憎悪を……与えるはず。
しかし、何故か陽向は何も感じなかった。
「あなたには感じなかったの……?あれなら別にダンジョンに潜ったこともないようなただの一般人でも感じ取れると思うのだけど……西園寺が勇者であることに関係しているのかしら?」
「さ、さぁ……?どうでしょうか……」
「まぁ、良いわ。とりあえずは早く例の物を回収しま」
ダンッ!!!!!
「な、何!?」
「はぅ!?」
玲奈の言葉を遮るかのように……大きな、あまりにも大きすぎる衝撃がこの場に走る。
いつの間にか、この場所、壁に、天井に、床に、幾つものヒビが入っていた。
そして、今も。
この場を大きな振動が支配し、そのヒビを広げさせている。
「まっ、まさか……」
当然の現状。
それに対して玲奈には思い当たる節が存在していた。
「例の物が回収されて……アレか!!!クソッ!やられた!早く撤退するわよ!もうすぐこの場所が崩落するわッ!」
転がっている子供たちを玲奈は抱えて、走り始める。
「えっ!?あっ、はい!」
玲奈の突然の行動に驚愕しつつも、陽向は玲奈の言葉に頷き、残っている子供たちを抱えて走り始める。
「急ぎなさいッ!もうすぐよッ!!!」
ヒビが広がってゆき……ゆっくりと崩壊していく。
「出口ッ!!!」
子供を抱えた玲奈と陽向は強引に開けられている鉄製の扉をくぐり抜けてその場から……人工的に作られたダンジョンから脱出する。
「ふー、危なかったわ」
鉄製の扉の向こう。
さっきまでそこにあったはずの殺風景な廊下の形はそこになく、壁が広がっているだけだった。
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