第一章

第1話

「初めまして。私は転校生の西園寺 陽向です。よろしくお願いします」

 

 実に見覚えのある金髪碧眼の少女が頭を下げて実に……本当に簡単な自己紹介を行う。


「はい!ということで、私たちのクラスに転校生が来てくれたぞ。是非仲良くしてやってくれ……で、だ。陽向はそこの隣の席に座ってくれ」

 

 30代アラサー、婚活中、拗らせ処女である我らが担任……山見和葉先生が僕の隣の席を指し示す。


「よろしくね」

 

「うんー。よろしくー」


 僕の隣に座った少女、西園寺さん……なんか一週間くらい前に暴走していた勇者である少女が笑顔で挨拶してくる。

 勇者と呼ばれていた少女がまさかこの学園に転校してくるとは……。

 まぁ、妥当か。

 

 ここは国立冒険者学園。

 2022年に日本国がダンジョンに入る人材を育成するために建てられた学園である。

 この学園はダンジョンを攻略する冒険者を育てる教育機関としては国内最高峰。世界でもトップクラスと言ってもいいだろう。

 

 冒険者になるための戦闘訓練、魔法についての勉学を始め、普通の教科などもしっかりと行い、倫理の授業などもしっかりと行っている。

 

 いやぁーにしても縁があるな。うん。まさか僕が瞬殺した勇者くんがうちの学校のクラスに転校してくるとは……縁とは実に面白いものだよね。

 

「うし!……朝のHRの連絡はこれで終わりだ。後は好きにしていて良いぞ。あ、当然うるさくならないようになぁー」

 

 山見先生がそう告げ、教室から出ていく。


「良し!」

 

 その瞬間にクラスメートの一人が魔法を使って防音結界を貼り、それを確認したクラスメートたちは各々好きなように話し始める。

 

「ねぇ、ねぇ!」


「よろしく!私は錬って言ってー」


「わからないことがあったら何でも聞いてね」


「元々どこの高校にいたの?」


「デュフ、デュフ……金髪碧眼美少女ktkr」


「きれいな髪……どんな手入れをしているの?」

 

 いつもは各々好き勝手に話しているクラスメートたちは、一気にの方へと集まってくる。

 ……ん?誰か一人変態が混ざってない?大丈夫?すっごい気持ちの悪いオタクが混ざっていた気が……?


「はうにゃ!?」

 

 その結果、僕が追いやられるという結果になる。

 隣の席にいた僕は人混みに飲みこまれ……早々に立ち去ることとなる。


「ひどいよぉー。もー。僕の席なのにぃー」


 僕は頬を膨らませながら、教室の窓の方へと居座り、不満の声を漏らす。


「すっごい人気だな。転校生さんは。俺ら二人以外の全員があっちに向かっていっているぞ」

 

 一人の男の人の声が、窓側に一人立っていた僕に向けられてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る