プロローグ2

『世界にダンジョンが出来てから早5年。……日本でのダンジョン踏破数は14件、世界でのダンジョン踏破数は36件となっております』

 

 テレビに映っているニュースキャスターがダンジョンについてのニュースを慣れた口調で報道する。

 僕、高校二年生である神崎 亜蓮はそんなテレビをぼーっと眺めながら、歴史の授業でやったことを思い出す。

 

 ■■■■■

 

 2021年。

 コロナと呼ばれていた病魔によって世界が混乱した年。

 世界はさらなる動乱に包まれた。

 突如、世界に魔物と命名された超生物が住まうダンジョンが誕生したのである。

 

 ダンジョン。

 魔物が住まう物理法則に反した空間であり、入り口は直径100m程度の穴でしか無いのにも関わらず、中は異常なまでに低く、中には階段があってどんどん下に行くことが出来るようになっている、


 ダンジョンに生息している魔物たちは何故かダンジョンに入ってきた人間だけの命を狙って殺すという性質を持っている生物だ。

 しかし重要なのは人間の命だけを狙う生物だと言うことではない。

 真に重要なのはその体内に存在している小さな石が莫大なエネルギーを有しており、環境に優しかったのだ。

 魔物の体内に存在している小さな石が新たなる環境に優しいエネルギーとして注目を浴びたのだ。

 

 そして、ダンジョンに入って魔物を倒した人間は己の力が上昇していることを認知し、スキルや魔法などと言った非科学的な能力を手に入れることも出来るのだ。

 

 そのため、世界各国は真エネルギー確保と非科学的な能力を持った人間……戦争を変える可能性を持つ

 特にエネルギーが不足し、オタク精神に溢れていた日本では熱心にダンジョンの探索、開発を進めていた。

 当時、なろう系の主人公になることを志した少年たちがダンジョンに入って死亡する事件が多発するほどに。

 

 2026年。

 世界にダンジョンが誕生してから5年も経てば人々はダンジョンのある日常に慣れ、しっかりとした制度も整えられていた

 日本ではたまたま当時の総理大臣がラノベに精通しているというちょっと信じれないこともあり、冒険者ギルドなどラノベ風の制度が確立され、今、日本はラノベのような世界となっていた。

 

 2023年に起きたスタンピート、ダンジョンから大量に魔物が溢れ出すという大事件を除けば、大きな事件もなく、人類はダンジョンと上手く共存出来ていた。


 ■■■■■

 


 チンッ


 

 僕が昔受けたダンジョンが出来た経緯についての授業のことを思い出していると、レンジの音が聞こえてくる。


「あ、出来た」

 

 僕は立ち上がり、床にダイレクトで置いてあるレンジからパンを取り出してもそもそと食べ始める。

 これが僕の朝ごはんである。


「……良し!行こうか」

 

 僕は朝ごはんを食べ終わり、立ち上がる。

 今日は水曜日。

 昨日に引き続き、また高校である。既に制服には着替え終えているし、学校に行く準備も終わっている。


「いってきまーす」

 

 僕は誰も居ない、狭く殺風景の部屋に向かって声を投げかけてから外へ出た。

 玄関の壁につけられている姿見鏡に黒髪紫瞳の小さな少年の姿が写った

 

 ■■■■■


「あっ、そういえば……あそこでの戦いは結局どうなったんだろうか?」

 

 通学路を歩いている最中、僕は昨夜の出来事をふと思い出す。

 

 昨夜。

 夜のお散歩中に見つけたなんかカッコいい女の子と、これまたカッコよくてイカシテいる右腕を持った男の戦い。

 あれがどういう結末を向かえたのか、途中で眠くなって帰っちゃったから結局わからないままなのである。

 少女と男が全力で殺し合いをしている……という状況も謎だしね。

 

「ちょっと見に行こうかな」

 

 僕は人通りの少ない路地裏へと移動する。

 

「暗天『藤』」

 

 そして、何もないところから一振りの刀を取り出す。

 刀身が黒く染まり、禍々しい力を放つ刀を。

 僕は刀から溢れ出す禍々しい力を操り、影の実力者モード時の服を装着してと跳躍する。

 

 魔法。

 それを使えば跳躍一つで宇宙空間へと飛び……そのまま自由に活動することも容易い。

 えーっと確か……ここから100kmくらい先立ったよね。

 僕はどこかの先生のようにマッハ20で空を駆け抜け……一筋の漆黒の光となった。

 まぁ……ものすごく高いところを飛んでいるから誰にも見れないだろうけど。


「ひゃっふー」

 

 風を切り、太陽を眺めながら僕は空を駆け抜けた。

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