第17話 カイル帝国兵士団長
◇カイル帝国兵士団長視点
「アルギン王国との国境から連絡が途絶えただと?」
ある兵士からの報告を聞き、そう答えたのはカイル帝国第15兵団団長だった。
「連絡が途絶えたのはいつからだ?」
「2週間前に出発した兵士からは連絡が届いています」
「ということは2週間前に何かあったか」
私は顔を曇らせる。現在首都にある兵士団で手が空いているのは第15兵団のみ。他の兵団はダンジョンのスタンピートを抑えるためやその補給のために出払っている。
「行くしかないか」
私はそうぼやくのであった。
1週間かけて南の国境までたどり着く。そこには近くの街の兵士以外には誰もいなかった。その兵士に話を聞くと3週間前までは何の異変もなく、兵士が来た時には血の跡が残っていたものの死体などは一切なかったという。私は死体が持ち去られた可能性も含めて周辺の捜索を命じた。
次の日、門の警備にあたっていた兵士からの連絡でサハギンの死体を運ぶ子供が門の前に集まっているとの報告を受けた。私は急いで門と広場を見ることができる場所へと移動すると、そこには30名程の子供がサハギンを持っているではないか。
「そこの子供たち、そのサハギンをどこへ運ぶ気だ?」
私がそう叫ぶも30名の中で誰もなんの反応も見せない。これは不可解だと思った私は兵士に命令する。
「門を開け。そしてその子供達を追跡しろ」
そう言うと、兵士たちは急いで門を開いた。すると門の前で立ち止まっていた子供達が一斉に動き出すではないか。兵士たちも不気味な何かを感じ取っていたのだろう。不用意に近づかず一定の距離を保ちながら追跡していった。
夜になると兵士たちが戻ってきた。
「国境の先、アルギン王国の山の中に大量の魔物の死体を発見しました。子供たちはどうやらそこに魔物の死体を集めているようです。その他にも人間の死体やその者が装備していたであろう剣なども集められていました」
その報告を受け私は兵士50名と私でその場所へ確認に向かうことにした。道中も子供達が魔物の死体を運んでおり話しかけてみるが反応は帰ってこない。何か薬などで操られているのかと勘繰ってしまう。そんな時無視されることにイラついたのか一人の兵士がその子供に手を出した。すると周りの死体を運んでいた子供達が死体を放り出し一斉に手を出した兵士に殴りかかってきた。
止めようとする兵士と呆気にとられる兵士で未来が分かれた。止めようとした兵士は子供たちを羽交い絞めにしようとすると他の子供が参戦してくるのだ。たちまちその兵士たちも子供たちに殴り殺されてしまった。一方、呆気にとられていた兵士たちには攻撃は飛んでこない。
「子供たちに手を出すな。巻き込まれるぞ」
そう言うと、兵士たちは一歩後ろへ下がった。子供たちの一方的な虐殺が終わると子供達は再び死体を運び出す。中には先程殺した兵士を持ち帰ろうとするものまで現れた。兵士たちは歯を食いしばりながらその後をついていく。山へ到着したときには朝になろうとしている時間帯で兵士が言った通りそこには魔物や人間の死体の山が築かれていた。
「原因は分からんがここに死体が集められていることは確認した。あと子供たちに手を出した場合、敵とみなされることもな。この後30分ほど休憩した後、国境へ戻る」
私は休憩をしていると、兵士の中に魔物の死体を解体して魔石を取り出すものが現れた。おそらく売り払って小遣いにでもするつもりなのであろう。私が止めに入ろうとすると山の南の方から女性と子供二人がこちらへ向かってきているのが見えた。私は子供たちの状況を思い出しつい殺気を漏らしてしまう。すると鍛えた大人ほどの体躯をした者が私たちに襲い掛かってきた。反撃すると子供たちまで殴りかかってくる。そしてそこは戦場となり、私たちは全滅した。
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