第18話 別れ

死体を片付けて三日後、カレスさんたちが来た。

「結城様、前回のお支払い分の物資をお持ちしました。ところでそちらに積み上げられている鎧と剣はどういうことでしょうか?」

そう聞いてくるカレスさんは攻撃的な目をしていた。それが良くなかったのであろう。ホムンクルスがカレスさんをとらえた。幸いカレスさんは抵抗しなかったがそれを眺めていた護衛の面々が剣を抜いた。


「やめなさい。攻撃してはいけません」

カレスさんが必死に叫ぶと護衛達は一瞬呆気にとられながらも剣をしまう。


「カレスさん。おそらく殺気が漏れていたのだと思います。落ち着いていただければホムンクルス達も解放するかと思います」

結城がそう言うとカレスさんは深呼吸して落ち着きを取り戻す。するとホムンクルスはカレスさんの拘束をといた。


「それで、その鎧と剣の話を聞かせていただけますか?」


「はい。それは1週間前にこの山に来ていた人たちが装備していた物です。私を見たとたんにホムンクルスが反応したので、おそらく私に殺気を向けたのかと。私たちは急いで山を下りたのでその後のことは分かりませんがここに多くの人の死体が転がっていました。ホムンクルスに反撃したことで私たちの敵だと認識したのだと思います」


「では、結城様から帝国を攻めたわけではないのですね」


「分かりません。ホムンクルス達は自己防衛します。それは殺すまでです。何が起きたかは分かりませんが、こちらの様子を見に来なければならない何かが起きたのだと思われます」


「そうですか。商人の中には戦争をチャンスだと思う人間もいますが私はそうは思いません。こちらの都合で真に申し訳ありませんが、今後の商売はないと思ってください」


「分かりました。今までありがとうございました」


「こちらこそ。儲けさせていただきましたよ。今日持ってきた分は前回代金を頂きましたので品物は置いていきます」


そういってカレスさんは帰っていった。知り合いが一人減ったことに涙が出そうになったがデライトとアリスが慰めてくれた。カレスさんたちの姿が完全に見えなくなった後、置いていった荷物を見てみると穀物を中心として食料が大量にあった。その数台車6台分である。これだけあれば畑を広げても食つなぐだけの食料がある。結城はカレスさんに感謝するのであった。


◇カレス視点

「旦那、よかったんですかい?」

護衛の一人が私に声をかける。

「よくはありませんが人との戦争では我々は稼ぐことができません。今は魔王復活で大変な時なのです。人間同士で争っている場合ではないというのに」

私は、人間同士で争うにしてもそれは魔王討伐後の話だと思っていた。しかし、あの鎧の数をみれば4、50人程度は殺しているだろう。しかも国境を越えてまで相手は進軍してきている。戦争になるのは遠くないと感じていた。

「あれだけのホムンクルスの数です。たったあれだけの食料で足りるとよいのですが」

ホムンクルスは食事をとると盛大に勘違いをしていたカレスであった。

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