第15話 魔王

◇魔王視点


全身が黒く染まり、二本の角の生えた人間の様な姿の者が立っていた。

「爺や。予定より魔力の消費が早いようだが何があった」


全身に肉がついておらず骨が浮き出ている老人が魔王の問いに答える。

「ゴブリンダンジョンとフォレストダンジョンが予定よりも早く殲滅されている地点がありますな。しかし、ダンジョンコアは破壊されていないため滅びることができず、回復のために魔王様の魔力を使っているのでしょう」


「それだけ多くの魔物が倒されているのだ。他の地点のダンジョンも活性化して被害を出しているのではないか?」


ダンジョンへの魔力供給は同じ種類のダンジョンへは一斉に行われるようになっている。勇者たちが攻略したゴブリンダンジョンで魔物が多くいた理由は、結城がホムンクルスを使いゴブリンを何度も殲滅させていたためなのだ。


「ゴブリンは最弱種の魔物ですからな。スタンピートを起こす速度も早いためどこの国も兵士を先行して配備しているのでしょう。どこの地点も大した被害は出ておりません。ただゴブリンの数が予想以上に多いためか攻略されているダンジョンも少ないようですが」


「まあ今は静観するしかないだろうな。私もダンジョンに魔力を取られ続けているため動けんしな」


魔王の魔力は魔物の生存圏が広まることで増加する。ダンジョンの攻略があまり進んでいない今ゴブリンダンジョンの活性化は魔王にとっては好都合であった。


ダンジョンが攻略されていくことで魔王が自由に使える魔力が増えることは人類には知られていない。結城は意図せず魔王の行動を抑制しながら自身の戦力を拡充していっていたのだ。まあゴブリンダンジョンの一件では人類側にもダメージを与えてはいるが。


「でフォレストダンジョンの攻略の方はどうなっている?」


「フォレストダンジョンは元々魔物の領域に多くあります。人間どもに被害を与えている様子はありません」


「それは仕方ないか。次にスタンピートを起こすダンジョンはどこの予定だ」


「リザードマンダンジョンとオークダンジョンです。リザードマンダンジョンは例の地点の近くにありますから予定よりも早く、大量の魔物が出現するかもしれません」


「そうか。また私の魔力が多く取られそうだな。今は休息に励むとしよう。爺や、引き続き監視を頼むぞ」


「かしこまりました」


魔王はそう言うと魔力回復に努めるため休憩に入る。爺やと呼ばれる老人も食事の準備に出て行ってしまった。魔王の居城は静寂につつまれるのであった。

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