第11話 安全

私を監視している者をとらえるためにホムンクルスは犯人を追いかけていた。結城は細心の注意を払いながら鳥の魔物が他に死体に紛れ込んでいないか探す。犯人が一人だとは限らないので私の警戒担当のホムンクルスを増やしたいのだ。運よく三羽の同じ鳥がいたため解体してホムンクルスを作成する。その時に私を監視していただろう人間が死体として運ばれてきた。

「あ~。とらえる時に反抗されると危害を加えたことになって殺されるのか」

結城は一人ごちた。しかしこれはどうしようもできない。命令の撤回はできないのだ。結城は事情聴取を諦めて死体を漁る。持ち物は、デライト達が売ったと思われる魔物の素材だった。どうやらこの人も商人と同じ目的で行動していたようだ。


考え事をしていると鳥のホムンクルスが帰ってきた。新しいホムンクルスも動こうとはしない。このとき初めて結城は安全なのだと認識した。安心したところでホムンクルスの数を確認する。


スライム:9458

ゴブリン:8645

角兎  :10

吸血蝙蝠:5

森猫  :200

ホブゴブリン:10

森狼  :3

サハギン:10

森鷹  :4


ホムンクルスの数がかなり増えている。毎日解体と死体処理をしたかいがあったというものであろう。一人でうんうんうなっているとデライトから質問が来る。

「突然うなりだしてどうしたんですか?」


「ああ、ホムンクルスの数が思った以上に増えていたからここまで苦労したなって思い返していたの」


「どれくらいの数がいるんですか?」


「合計すると2万よりちょっと少ないくらいかな」

デライトとアリスは驚愕した。そしてこの人は決して敵に回さないように決めた。

「でもまだ安全面でも戦力面でもちょっと物足りないんだよね。私今のままだとここから動けないし」


「えっ。なぜですか?」


「ホムンクルスの物を集めてくる場所をここに決めちゃってるの。ほかに処理してくれるホムンクルスができるまではここで戦力拡充に努めないと強敵が現れた時に一気にやられちゃうからね」

デライトは納得いった。だから自分たちに買い物を頼んでいるのだと。だがデライト達は結城に助けられた身だ。裏切る気持ちはこれっぽっちもわかなかった。だがデライトは質問してみた。

「買い物もホムンクルスに命令すれば解決するのではないですか?」


「う~ん。ホムンクルス達の命令は撤回できないのね。で、私が襲われている時に私たちに危害を加えたものは殺すことっていう命令を与えているの。それで多分街に向かったりしちゃったら人にぶつかっただけで殺し合いに発展しちゃうと思うんだよね」


デライトは自分が思いのほか重要なことを任されていると分かり俄然やる気になった。アリスも同じである。


「これから、食料調達など頑張ります」

「アリスも情報収集頑張る」


「二人ともありがとう」

やる気になった二人に嬉しい気持ちがありながらも長期的に見ればホムンクルスによって、いろいろなものを生産できるとは口にできない結城だった。


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