第10話 初めての商売

フォレストウルフのホムンクルスを送り出して二日ほど経った頃サハギンの死体が運ばれてきた。また、兵士ではないが武器を装備した人間も運ばれてくることが増えた。結城はダンジョンを攻略している者たちだと勝手に解釈している。次のダンジョンが見つかるまでサハギンの魔石を保管しておく気でいたがホムンクルスがひと際大きなゴブリンを持ってきた。王冠をかぶっていることからこれが最上種ではないかと結城は踏んでいる。サハギンの魔石はホムンクルス化して、私たちに危害を加えたものを殺すこと。落ちている道具をここに拾ってくること。を命令した。


次の日、デライトとアリスが帰ってきた。荷物は一掴みの塩だけだった。やはり魔物の素材を安く買い取られたようでそれでできるだけ多くの塩を買ってきたようだ。魔物の素材を売った商人には後をつけられたらしいが、魔物の素材を持ち運んでいるホムンクルスから素材を奪い取ろうとしたことでホムンクルスに襲われたらしい。それがこの場所に着く寸前のことだったためそろそろ死体が運ばれてくるだろうとのことだ。


とりあえず、ここに来るまでにまともに食事をとれなかったデライトとアリスに兎肉の串焼きと野草のスープを作ってあげる。二人はこんな食事でも満足そうに食べてくれた。そんな時に小太りの商人の死体が運ばれてきた。懐にはお金がいくらか入っていたので今後の二人の活動資金にしてもらうことにした。


食べ終わったころにダンジョンの情報をアリスに聞いてみると、少し離れたところの村がリザードマンに襲われたという噂が流れてきているとのことだ。ダンジョンかどうかは分からないがリザードマンは集落を作り、武器も作成する知能を持つ種族らしく近く討伐隊が組まれるのではないかという噂も出回っているらしい。


結城はリザードマンに関しては無視することにした。討伐隊が組まれるのであれば、ホムンクルス達がその地域まで広がっていれば死体を運んでくるだろう事を見込んでだ。ほかに情報もなかったためこの話は終わりとなった。


二人はすぐにでも村に向かおうとしていたが結城がそれを許さず数日は体力回復に努めるように言い聞かせる。行きの分の食料は持たせていたが帰りはろくに食べることもできずに帰ってきたのだ。二人はしぶしぶだが従ってくれた。


二人は魔物から売れる素材をはぎ取り、結城は人から武器などの道具をはぎ取り死体を処理していく。魔石に余裕があればこの作業も任せてしまいたいと思っているが今はそんな余裕がないため手作業するしかない。作業を進めていると見慣れない鳥の魔物の死体があった。デライトも知らない魔物らしく解体して魔石を取り出す。そして、ホムンクルスを作成し、私たちに危害を加えたものを殺すこと。私を監視している者を捕まえること。を命令した。なぜこんな命令にしたのかというと、デライト達の後をつけた商人がいたことから身の安全を少しでも守っておこうと思ったためだ。するとホムンクルスはすぐに動き出した。ホムンクルスに危害を加えたなにかがいたのかと思っていたが進んだ方向には私たちを監視していた何者かが逃げている様子が見て取れた。結城は思い付きの行動だったがもっと慎重に魔石を使用していかないといけないと肝に銘じたのであった。

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