第9話 隣国

あれから一週間が経ち、ホムンクルスが狼を持ち帰るようになった。デライトが狼を見て言う。

「これは、フォレストウルフですね。この辺りでは見かけない魔物ですのでやはりダンジョンがあるのだと思います」


「ダンジョンって一体の魔物しか現れないんじゃないの?」

結城は気になったので聞いてみた。


「複数階にまたがるダンジョンだとその上位個体が現れることがあるんですよ。フォレストウルフはフォレストキャットと同じダンジョンから生まれたのだと思います」


結城はフォレストウルフを殺すように命令すれば別の魔物の死体が手に入るかもしれないと考えたが、どうせスタンピートが発生すればホムンクルスに襲い掛かるだろうと判断した。そのため、フォレストウルフの魔石は他のダンジョンの情報を得られるまで保存しておくことにした。


「デライトとアリスも順調に回復したみたいだし、明日にでも魔物の素材を売りに行ってみようか」

結城が提案するとデライトとアリスはやる気満々だった。


その日の夕方、結城達が山を下りようとした時に北の方角よりホムンクルスが鎧を着た人間の死体を運んできた。デライトが言うには北のカイル帝国の鎧らしい。とりあえず死体の処理は後回しにして結城達は山を下りた。


次の日、デライトとアリスはフォレストキャットの素材を持って自分たちが捨てられた村に行ってみるという。結城は別の村にした方がいいと言ったのだがそれ以外にはその村に通じている村しか知らないようで物資のことを考えると少し遠いらしい。結城は最悪の場合は素材を捨ててでも逃げるように伝えた。そして、デライト達は村へと旅立った。


デライト達を見送り、結城はいつも通り山に登る。到着すると大量のカイル帝国の鎧を着た人間の死体があった。これはまずいと思いながらもどうせ戦争になるかと安易に考えた結城は鎧と剣をはぎ取り、死体を処理し始める。そしてフォレストウルフの魔石でホムンクルスを生成した。命令は、私たちに危害を加えたものを殺すこと。サハギンを殺すこと。としてはぎ取った剣を持たせた。ちなみに身長150cm程の尻尾付きの獣人だったため鎧は着れなかった。


◇カイル帝国の国境警備隊員視点


魔王が復活して初めの頃はゴブリンがたびたび襲来してきたがここ2週間程度ぱったりととまった。隣のアルギン王国がダンジョンの制圧に成功したのかと思っていたが、次は国境付近を子供がうろうろし始めるようになった。国境を渡るようなしぐさをするものはいなかったため警備隊員は何もしなかった。


そのうち、冒険者がアルギン王国に向かうために国境を訪れるようになった。その冒険者達は野蛮で国境に訪れる子供を見つけるなり売れば儲けになるとはしゃぎ捕まえた。すると同じような子供が現れ次々に冒険者たちを殺していくではないか。流石に止めに入る警備隊員達であったが次はその矛先が警備隊員達に向くこととなり、国境警備のための砦にはわずか一日で誰もいなくなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る