第8話 森猫

結城の言葉にデライトが反応する。

「ダンジョン攻略ですか?結城さんはダンジョンに潜っているんですか?」


「私は潜ってないよ。ホムンクルスがゴブリンの討伐をしているだけ」


「ダンジョンはコアを破壊しないと無限に魔物が湧き出ると言われていますけど、ホムンクルスはコアを破壊しないのですか?」


それを聞いて結城は迷う。別にダンジョンを攻略する必要はない気がする。死体の回収要員は大いに越したことはないのだ。それを踏まえデライトに質問する。


「ゴブリンはこのままでもダンジョンを封じ込められているからいいかな。ちなみに近くに他のダンジョンがあるかしらない?」


「隣の国になってしまいますが、サハギンのダンジョンが北に行ったところにあるという話は聞いたことがあります。この場所はアルギン王国の最北ですので」


結城は初めてこの国の名前を聞いた気がした。まあ関係ないが。それにしても他の国では流石に領土問題になりそうだ。北はやめておくことにした。


「少し遠くてもいいから他には知らない?」


「そういえば西のあたりにフォレストキャットの群れが不定期に現れるという話を聞いたことがあります。ダンジョンとは限りませんが別の街に被害を出したとか」


結城は新しい魔石が欲しいところだったので残しておいた大きなゴブリンの魔石を使いホムンクルスを生成した。身長150cm程のホムンクルスが誕生した。命令は、私たちに危害を加えたものを殺すこと。フォレストキャットを殺すこと。とした。ホムンクルスは命令を与えた瞬間に西へ向かい出した。どうやらデライトの情報は正しかったらしい。


「ありがとう。デライト。どうやら情報は正しかったみたい。商売をするときもダンジョンの情報なんかがあったら仕入れといて欲しいな」

すると不意にアリスが手を挙げた。

「情報はアリスが集める」

結城とデライトの二人は首をかしげる。

「アリスはデライトと一緒に行動するんじゃないの?」


「一緒だけどアリスにも仕事が欲しい」

どうやら今までずっとデライトと話していたのでアリスは暇だったようだ。


「じゃあアリス、お願いね」


そんな話をしながらもゴブリンを解体して死体を処理していく。ゴブリンは売れる素材が魔石しかないのだ。その魔石も結城によってホムンクルスに変えられるため売れるものはない。そんな作業を昼頃まで続けているとホムンクルスが猫の死体を届け始めた。それは数日前に結城の手を引っ掻いた猫の大きなものだった。念のため解体して魔石を取り出しホムンクルスを作成してみる。だが命令を与えることができなかった。結城はがっくり項垂れる。


「どうしたんですか?」

デライトが心配して声をかけてくれる。


「フォレストキャットの魔石は前に手に入れたことがあってね。新しく命令を与えることができなかったんだよ」


「フォレストキャットは爪と皮が売れるのでお金にはなりますよ」


そう言われて、次の魔物の死体を期待して待つことにした結城だった。

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