第5話 中学一年生(僕・私)

 部活動は、僕は剣道部、千鶴は卓球部に入った。

 剣道部は全国的な強豪校であった。だが今日は通常の稽古は辞め、卓球をしなさいとの命であった。なかなかあることではないと先輩方もクビを捻っていた。


 卓球部には千鶴がいることはわかっていた。近くでみるのは久しぶりだなと思っていた。


「え?! 千鶴?」


そこには数年ぶりにはっきりと見るに千鶴がいた。


「かわいくなった!!!」


 メガネも辞め、痩せ型で、ニキビも治りきれいな肌を持つ美少女になっていた。


「よかった。よかった~よ~」

 それが第一の感想であった。


 僕もまだまだガキながらも年は重ねていたので話しかける勇気はもっていた。


「ち―ちゃん、お久しぶり!」


「あぁ徹君、お久しぶり!」


「どう卓球おもしろい?」


「あぁマイナーなスポーツと思っているでしょ?」


「そんなこと一言も言ってないやん!」


「剣道部は大変そうね!」


「大変だ!アハハ」


「アハハ、受ける!」


その瞬間、ふたりは同時に(いつ以来、いっしょに笑っただろうか)と脳裏をかすめ千鶴は泣きそうになった。



 いつから仲良くなり、いつからか疎遠になり、またそして仲良くなる……


 今、ふたりには同じ時間が流れ、同じ種類の感情「なつかしさ」が流れていると思われた。


「なんか…久しぶりに話せてよかったよ!」


「私も、そう思った!」


「廊下とかで出会ったら話さない?」


「うん、うん、いいよ」ふ


【女の子はみんなきれいになる】と千鶴と話しながら痛感していた。




「でもあんまり仲良くしたら山田が怒るね!」


「そんな人じゃない。勉強できてバスケも上手い。女の子みんなの憧れの的よ!」


「知ってる。山田はいいやつだ。僕が付き合いたいくらいだよ、アハハ」


「アハハ、みんなから羨ましがられる」


「だろうな。で、人のことはいいけどおまえは好きなの?」


「え?!あ、当たり前じゃん。付き合ってるんだよ!」


「それならいいんだよ。おまえの気持ち大切にしなよ、山田の気持ちも大切にしてやってくれよ」


「うぐ。」

(そういうやさしい心はずっと昔から変っていない……やっぱりダメだ、すき……)


 千鶴は高校・大学一貫の女学院に進むことになっていた。

 時間の制約が愛とどう因果するのかはわからなかったが焦りの気持ちが生まれていた。

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