第4話 小学四年生(私)

 小学四年生で徹君とまた同じクラスになった。うれしかった。


 でも自分の気持ちを表すことも行動することもしなかった。

「徹君が好き!」

の気持ちは友達にさえ完全に封鎖した。

怒り、喜び、哀さ、楽しさの感情の中でも愛を伝えることが出来ない苦しみは人間の感情の最たるものに思えた。


 また、徹君が友達からからかわれているのを見るにつけ、自分の感情は海の最も深い場所へと落とし込まざるを得ない思いがした。


 何がしたいわけではない。普通に話しがしたいだけだった。話して笑いたかった。望みはそれだけだったが、とてもとても不可能なことに思えた。


「だれにも言えない恋」と付き合っていかなくてはならなかった。


「千鶴、誰か好きな人いないの?」輝美


「いや、いないよ」千鶴


「あんたメガネ、コンタクトに変えたら?」


「変えたらどうなるの?」


「かわいくなるよ!」


「岡山さんより?」


「え?! なんで岡山さんなの?」


「いゃ、ちょっと聞いただけ。なるわけないやんね!クラス一の人気者にね?」


「なんであんたが岡山さんを目標にしてるかは聞かない。でもあんたはかわいくなれるよ。これは約束する」


「輝美、ありがとう。ずっと友達でいてね!」


「当たり前でしょ。でも岡山か?まず、あんた痩せなさい」


「わかった、コンタクトにするのと、痩せるのから始める」


「うん。目標が私にはわからないけど必要になったら言って?」


「うん、ありがとう、がんばってみる」


 こうして学校一の美人になる女の子がスタートの一歩を進めた。


 

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