第15話 残念世界の残念勇者 ストーリー超短縮版。(ネタバレを含みます)
子供が生まれない。
男の子は更に生まれない。
嘘をついたり負の感情を持つと魔獣に変わってしまう。
800年前、カモミールに現れた魔王は、世界に3つの呪いをかけた。
魔王は200年ごとに現れ、呪いの効果を高めて行く。
カモミールは人口減少のため、次の200年を迎えることができないほど疲弊していた。ここで魔王を倒さなければ、カモミールは滅んでしまう。
そんな世界を守護する女神ティナは、過去6回世界を守り切れなかった勇者を召還した。
嘘が付けず、人を憎んだり裏切ったりできない世界『カモミール』。
男が極めて少ない女世界に勇者ケインはやってきた。
魔王出現まで1年。
時間の無い中、ケインを迎えた女王のアイリス、プリンセスのアリスを中心としたカモミールの戦士たちは、ケインの実績を知りながらもケインを信じ、ケインと共に世界を救う戦いに挑む。
当初はアイリス、アリス、ターナ、マオ、レナだった勇者チームは次第に仲間を増やし、カモミールの歴史や魔王の秘密を解き明かして行く。
そして魔王がケインの魂を持つ『負のエネルギー体』と知る。
ケインは魔王に負の心で攻撃してはダメだと気が付き、単身魔王に対峙した。
「俺はお前だ」
同じ魂を持つ魔王にケインは語り掛ける。
800年前のカモミールでは、領地を争う内戦がおこっていた。
が、その裏で女神の関与を知ったティナは、勇者を送り込む。
それが前世のケイン。
ケインは戦争を終わらせようと、仲間たちと共に奔走する。
だが、その仲間たちは、ケインの存在を疎ましく思う者たちに、無残にも暗殺されてしまった。
中には子を身ごもった妻、前世のアリスもいた。
深い悲しみと怒りの中に居た前世のケインの前に、女神の関与で生み出された負のエネルギーの集合体『魔王』が現れる。
ケインは戦いあっさり食われてしまうが、ケインの魂の一部が魔王の人工魂に食らいつく。
だが、怒りに満ちていたケインの魂は魔王のエネルギーを使い、世界に3つの呪いをかけてしまう。
「人が多すぎる!だからもめごとで収拾がつかなくなる」
「男ばかりが居るから暴力的な世界になるんだ!優しい女性の世界なら戦いは起こらない」
「ウソや憎しみ!裏切り!こんな人間達がいるから世界はうまくいかないんだ」
妻と生まれるはずの我が子、仲間たちを殺されたケインの心にあった怒りが、形を変え呪いとなった。
ケインは魔王に見せる。
大陸の敵対していた種族を1つに纏め上げ、共に手を取る姿を。
そして言う。
「この世界に、もう争いはない」と。
魔王の呪いは世界を苦しめた。だが苦しんだ分、カモミールは清く正しく美し世界へ変わっていた。
「俺たちのかけた呪いは無駄ではなかった。もう、お前の役目は終わったんだ。後は俺たちに任せろ」
ケインの言葉に魔王は両手を掲げ笑う。そして前世のケインの魂の欠片はケインの元へ帰り、魔王は消えた。
カモミールは800年の長い魔王との戦いに終止符を打つ。
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平和が訪れたと思ったカモミールだったが、カモミールは時間がループする『ループワールド』へ陥っていた。
1200年前から、カモミールは何度も同じ時間を繰り返している。
それを知る女神『ヴィーナス』と『エクセレント』は、ケインにアイリスを殺すように言う。
『カモミールの時間ループは、アイリスの魔法の暴走から始まります』
アイリスの氷魔法が暴走し、ループワルールドが発動して時間は1200年前に戻ってしまう、と言うのだ。
ケインはアイリス殺害を拒否する。
「俺がループワールドを終わらせる!アイリスは殺させない!」
と言うが、ヴィーナスもエクセレントも、前の時間で何度も同じ言葉をケインから聞いていた。
だが、女神は『生きとし生けるものを守護する立場』とし、今回もケインに賭け、任せるという。
ケインは原因を探し、ループワールドの阻止に動く中で、世界誕生の時から存在する守護者と出会う。
そしてカモミールは、星の中心に『世界を浄化し再生するアイテム。聖杯と起源の水』があることを知る。
ピー、ポセイドン、ドワーフは聖杯と起源の水を『しかるべき時に使う』ために守る守護者だった。
ピーたちにはそれぞれ神殿があり、神殿は高いセキュリティーで守られているため、聖杯と起源の水にたどり着くことは不可能に思えた。
だが、ドワーフのうっかりで、神殿のカギが何者かの手に渡ってしまう。
1つ鍵が無いだけでは大事に至らないが、ドワーフはケインに鍵を取り戻すように頼む。
そんな時、アイリスの魔法の暴走が始まった。
カモミールの街は凍り付き、王宮で伏せるアイリスは日増しに衰弱して行く。
「アイリスが死ぬと星は凍り付き、ループワールドが発動します」
ヴィーナスの言葉にケインは焦るが、アイリスの殺害には絶対同意しない。だが、ケインにも解決策は見つかっていなかった。
アイリスは凍る街を見て言う。
「婿殿、アリス・・私を・・」
自ら死を選ぶアイリスを前に、ケインは『俺を信じてくれ』と言うのが精一杯。それでも諦めないケインは、アリスと部屋を出ようとした。
部屋のドアは、開けることができないほど凍り付いていた。
アリスが言う。
「最高のセキュリティーだぞ」
ケインはその言葉でひらめく。時が戻れば、鍵も盗まれる前に戻る。
「ループワールドは、神殿のセキュリティーでは?」と気が付く。
鍵を盗んだのは、カモミールに潜伏していた女神リリスとギルバ。
ケインは2人を見つけ出し、鍵を神殿に納めると、アイリスの魔法の暴走が収まり、ループワールドは発動しなかった。
カモミールは正常な時間へ戻り、未来へ進みだす。
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リリスとギルバに逃げられたケインたちだったが、女神としての能力を失った2人に、もうできることはないと判断し、天界に任せることにした。
今度こそ平和を…と思った矢先、魔界からの刺客が来る。
サタン一族は『邪神ドザーグ』を復活させ、世界を我が物にしようと企てている。
ドザーグ復活に必要なアイテムを、たまたま手にしていたケインたちが狙われたのだ。
刺客のウリエルは圧倒的な強さを見せ、アリスさえも諦めるしかないほどだった。
が、よもやまさかの美食家。
アリスの作る料理に、あっさり寝返ってしまう。
ウリエルから情報を得たケインたちは、邪神ドザーグの復活阻止に動く。
邪神ドザーグは、聖杯と起源の水や守護者を生み出した創造主ですら予想しなかったイレギュラー的な存在。
過去に一度魔界に現れ、奇跡的に封印できたが、その強さはチートだという。
ケインたちは復活されたら敵わないとし、復活の阻止を目標として、サタン一族を倒すことを考える。
サタン兄には『魂の嘆き』と言う即死攻撃がある。自らも魂の50%が消滅する捨て身の技だが防御は不可能。絶対攻撃を持つ上に、強力な魔法を持つサタン弟サタオと、サタン妹サタコがついている。
そしてサタンの居城は魔界の北地、氷の下にある湖『氷底湖』にあった。
強力な魔法を使う弟と妹に守られ、難攻不落の城は氷の下。
苦戦が予想される中、魔界の閻魔大王を仲間に加え、天界の女神たち総出の総力戦が実行される。
氷底湖に侵入したケインたちは城を落とし、サタン兄弟妹が復活の儀式をする『地獄の穴』へと侵入する。
卑怯な策を使いながら、何とか弟と妹を倒すし、サタン兄に剣を突き立てるが、サタン兄は高笑いを始め、地面は大きく揺れだした。
「ケインさん、ドザーグです・・」
ヴィーナスの震える声がする。
予想より早くドザーグは復活してしまった。
サタン兄にはドザーグを操る自信があった。だが、操れるはずもなくドザーグに食われる。
女神たちは防壁を張り、時間を稼ぐから倒す方法を考えろと言う。
が、圧倒的なチート力を持つドザーグに、アリスは匙を投げ、アイリスとアリッサ、パルムとセシルは現実から逃避する。
ケインは切り札の聖剣九重を使おうとした。
九重は9つの魔法を混ぜ合わせ、新しい魔法を生み出すことができる。
が、ケインの防御力では、技の発動はおろか、混ぜ合わすことすらできないと九重は言う。
万事休す・・・・女神たちもアリス達も諦め、ケインもまた、自らに力が無いことを悔やみ、両膝を地に付け負けを認めた。
その時、ケインに声が聞こえる。
『諦めるのか?相棒』
魔王の声。800年前のケインが魂の一部を魔王の魂に移したように、魔王もまた、戻ったケインの魂に自分の魂を残していた。
マイナスレベルのケインの中で力を蓄えていたのだ。
「俺の力はお前の力だ!」
魔王の力がケインに流れ込む。
「ちょ!主!なにしたの?あなた一体!?」
驚く九重やアリス達にケインは言う。
「俺の中の魔王が力を貸してくれている!」
「魔王?メイドインカモミールの魔王?そうだぞ、魂を同じくする、もう一人のケインだったぞ」
アリス達も気が付いた。
『頼む!皆!俺に魔法をくれ!』
ケインは1人では何もできない勇者。仲間がいて初めてケインは勇者になる。
アズサ、ウリエル、アイリス、パルム、セシル、ターナ、マオ・・そしてアリッサとアリスから魔法を貰う。
仲間たちから魔法を得たケインは、決して負けることのない最強の技を持つ勇者となる。
互いに相反する炎と水。光と闇・・・それらを混ぜることで、存在しない魔法。虚数世界の魔法が生まれた。
いかに強くとも、この世の存在のドザーグは虚数世界の魔法の前に散る。
戦いは終わった。勇者ケインは世界を守り切った。
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