第12話 星猫編  星猫②

既に王宮の周りでは、兵たちが動き出していた。


街からは、多くの冒険者やギルドメンバーが集まり、壊れた王宮の瓦礫の撤去計画、ロプロスの処分法を検討し始めている。




「王様」


私は王様たちの元へ行く。


ゴルノバ王とステラ女王は、女神『サーヤ』の話を聞いていた。


「おお雪姫、この方の話だが、なんか今一つ理解しきれなくてな」


「ですわ。天界とか下界、女神って何のことですの?ドワーフ様と同様の神なのでしょうか?」


この世界の概念だと理解し難いかも。




神は月に居るドワーフさんだが、ドワーフさんは信仰を求めてはいない。


見守ることを旨とした神と、守護し信仰させることを求める女神とでは、まるで別物だ。


「まったくなんですか?プンプンです。女神を知らない下界民とは、潜りではないのですか?」


潜りの下界民ってなんだよ。でも、まるで的外れではないか。ここは重力の底の世界。隔絶された世界だ。


「あのさ、女神サーヤの事は知らないけど、女神の事なら知ってるよ」


「おお!流石は雪姫だ」


「私も知ってますよ。前の世界に居ましたからね」


ミサキさんも知っているようだ。


「本当ですか?女神を知っているなら、なんでひれ伏さないのですか?」


そう言うルールなの?


「女神を前にひれ伏さない下界民など、見たことがありません。神の加護で天罰を与えますよ」


うわ・・高圧的ではないけど過激だ。ティナさんと大違いだ。


「女神ごときが何を言うのです?光属性の回復役。所詮NPCの便利キャラではないですか」


それ、ゲーム内の話。


「あのさ、私の知ってる女神は、ひれ伏せとは言わなかったから、失礼が有ったら謝るよ」


「まぁ、なんて馬鹿な女神。下界民に何を教えているのだか?どなたです?その、ひれ伏すことすら求めていない女神さんは?」


名前出してもいいよね?


「えっと、ティナさんとアルテミスさんかな?」


あっ、女神サーヤがひれ伏した。


「おい雪姫、女神って神だと聞いたぞ。何偉そうにしてんだよ」


「うん。自称でも神様だよ。土下座させるのはどうなのかな?」


「流石は雪姫だな。あの偉そうなのがひれ伏すとは」


「ですわね。何を言えばあなるのかしら?凍らせるって脅しましたの?」


ああ!めんどくせー―――。話がややっこしくなる!


「も、申し訳ありません!ヴィーナス家の関係者とはつゆ知らず、無礼な口を利いた事、深く深くお詫びいたします」


地べたに頭を擦り付けてひれ伏すサーヤさん。


ティナさんは、確か天界の権力者の一族で、天界ではナンバー4だって言ってたかな?


「議長、副議長に、このことは報告しないでいただけると、サーヤは嬉しく思います」


天界の最高意思決定機関?16評議会の議長がティナさんで、副議長がアルテミスさんって聞いたよな。


「あのさ、知り合いと言っても、勇者のケインさん達を紹介してもらっただけだから」


「ひぃぃぃ!!!!!あの勇者様とも・・・重ね重ね御内密に!!」


ああ、めんどくせぇぇぇ!!!


 『ニャ―――――』


ん?サーヤさんの服の中から猫?


いや、猫の鳴き声だが、猫じゃない。目は猫の目だが、体は猫の形をした何かだ。


猫の体の模様は、宇宙空間そのものだ。しかも中の星々は動いている。


その猫の姿をした生物?は、私の方に歩み寄る。


「ニャ――――ン」


ヤバイ、得体のしれない生物だけど、可愛い!


「いけません、星猫に触れては!」


え?もう指先を舐めてくれてるけど。


私は手を差し出し、その生物は私の指を舐めていた。


「ああ、何と言う事でしょう!?星猫が汚れてしまいました!」


私を舐めて汚れた?失礼だな。綺麗に洗ってるよ。




星猫と呼ばれる生物は、私の腕を登り肩に乗る。そして両足で立ち上がると両手を伸ばし、ぷかぷか浮かぶミサキさんにジャレついた。


その様子を不思議そうに見ているサーヤさん。






王宮が壊れ、ミサキさんがギルドに入ると言いだし、女神が現れ、星猫と言うよくわからない生き物が私の肩に乗る。


いきなり色々あり過ぎだ。


なにから片付けるべきか?




「皆さん、大丈夫ですか?」


ルナさん登場。神の使いとして、この世界にはよく来てくれる。


「ドワーフ様が、世界が亡ぶ厄災が来たと言うので。神の使いとして来てみたんですが」


「穴からロプロスが出てきたんだけど、被害は王宮だけで済んだよ」


私の言葉に辺りを見渡し、既に戦いが終わっていることを確認する。


「流石は神をも超える雪姫さんですね。あのロプロスも1撃ですか」


感心するルナさんだが、『神をも超える』に食いついたのは女神サーヤ。


「やはり、あなた様は『神以上』の存在でしたか。この女神サーヤ、あなた様にお仕えします!どうか私を配下に」


なんで女神が私の配下になるんだよ?


「雪姫さん?こちらの方は?神の使えの私の前で『女神』を名乗られていますが」


ルナさんが食いついた。混沌が深くなる・・・。




「私は下界の守護者、天界の女神サーヤです。神の使いと名乗られましたが、女神に使いなどいません。説明を求めます」


「私はラムタ13世界を見守る神、ドワーフ様の使いのルナです。女神など聞いたこともありません。神の名を語る貴方が何者なのか、説明を要求します」


糞忙しい時に、またややっこしくしやがって・・・。


「似非神には、神の加護で天罰を与えますよ」


「6000度の炎で、程よく焼いて差し上げましょうか?」


サーヤさんからは、まだ話も聞いてないのに、これ以上ややっこしくされるのは御免だ。


「双方離れて!サーヤさん、ティナさんに言うよ。ルナさんも言うこと聞かないと凍らせるよ」


私の一言は絶大だった。サーヤさんはひれ伏し、ルナさんは3歩後ろに下がった。


「立場と言い分は分かるけど、とりあえず片付けたい問題があるから、邪魔しないで」


「にゃーーー」


なぜか肩の上の星猫が、偉そうに上から目線でどや顔をした。




「あれ、ドワーフワールドのルナ様だよな?」


「うん。神の使いだよね」


「関係ない。雪姫は相手の地位や立場など気にする奴ではない」


「ですわ。怒ると誰でも凍らせると脅しますわ」


「ひゃはははは、さすがは雪姫です。私を凍らせただけのことはあります」


おい!そこ!何をコソコソと!




まったく・・人の悪口言ってる場合かよ?問題山積なのに。


でも、一番気になるのはサーヤさんだ。いつ来た?何をしに?かな?

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