第11話 星猫編  星猫①

穴から頭だけ出したロプロスは、体を左右に揺らしながら、這い出すように外に出ようとしていた。


「雪姫!」「マスター!」


ギムとマリアだ。


完全に出たら厄介だ。動きが取れない今のうちに。


「マリア!重力子砲!」


「下がれ下がれ!死にたくない奴は、もっと下がれ!」


ギムの言葉に、避難していた兵や侍女、王や女王は後方へと駆ける。


「重力子砲、発射します」


マリアの重力子砲が放たれ、ロプロスの目の前でブラックホールが形成された。


が、咆哮1撃。物理限界攻撃のブラックホールは、ロプロスの咆哮の一撃で消滅。


世界を1度滅ぼしかけた伝説の翼竜。白の一族が魔との契約により、何とか倒した相手。外に出したら、只では済まなくなる。


「雪姫!使いなさい!私を凍らせたアブソリュートです!」


ミサキさんが叫ぶ。


おうよ!被害とか言ってられない。ここは使う!




「行くよ!アブソリュート!私に守る力を貸して!」


体から冷気が噴き出す。体内を魔力が駆け巡る。駆け巡る魔力をコントロールしながら、少しずつ凝縮させて行く。


あれから何度も練習し、磨き抜いた技。痛みにも慣れ、反動も抑え込む。


体の中の魔力を凝縮させると指先に・・・


 『アブソリュートスノー!竹だぁぁぁぁぁぁ!!!』


私の指先が光り輝くと、白い点が放たれる。風を切る音と共にロプロスに穴を穿つ。




「あんぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」


断末魔の叫びをあげ、ロプロスが穴の中で凍ってゆく。


そして、大きな氷の塊に包まれたロプロスは、王宮の上に落ちた。


「ギム!!」


「おう!任せろ!」


巨大な氷に向かいギムが飛ぶ。


「ちょぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


連撃光速剣が氷を切り刻むと、ロプロスは肉片と化した。




「すげぇ・・・」


「これが雪姫マスターの力・・」


動けないでいたとはいえ、伝説の翼竜を1撃。


初めて間近で見るアブソリュートに、ソーマや兵たちは、言葉を失う。


「見事ですよ雪姫」


ミサキさんは素直に褒めてくれた。


「流石は私を凍らせ、斬った技ですね」


余り素直ではなかった。やっぱり根に持っている。


「雪姫、よくやった。また助けられたな」


「雪姫さん、良く倒してくれましたわ。また世界が亡ぶところでしたわ」


「いやホントです。まさかあれを倒せる方がいるとは思いませんでした」


王と女王・・・って、お前誰だ!?


ゴルノバ王とステラ女王と並んで、一人知らない人がいた。


「あっ!私は女神『サーヤ』です。助けて頂き感謝します」


女神だとぉ!?




「マスター!」「大隊長殿!」「がおがおがお」「マスター!!」


2号店から、テレサと飛鳥さん、ダイルとトーマが駆け付けてくれる。


「雪姫さん~~~」


そしてマリリンさんは、ダイルの手を取り抱き付く。


「がおがおがお」


「ダイル様は、役得と申しております」


カウラちゃんの通訳も入り、なぜかダイルは抱き付いてきたマリリンさんにひっぱたかれた。


「来てくれたんだね。でも、何とか倒せたよ」


王宮は完全に倒壊しているが、ロプロスは氷漬けのまま、バラバラに転がっているのが見てわかる。


「言葉もありません。流石です」


テレサに言われたが、次の瞬間、飛鳥さんのナイフが、私の顔をめがけ飛んできた。


「絶対防御!!!」


ってこれ、ミサキさんを素通りしたら、私に刺さってないか?このナイフ。


「やはりあなたは、ミサキですありますね?」


ナイフ投げるのはさ、まず確認してからね。


テレサとダイル、トーマが後ろに飛び構えた。


「タイムタイム!攻撃しないで!説明するよ」


私は2号店の攻撃を制止する。


「絶対防御!」


ミサキさんが使ってくれた絶対防御は、私のタイムを聞かずに、剣を振り上げ、兜割に来たマリリンさんの攻撃を防いでくれたものだ。


っ言うかあぶねーな。なんで私の頭を割りに来るんだよ?




私は2号店の面々と、マリリンさんに説明した。


勿論、私の私見を含めた『擁護的』な内容でだ。


「何を企んでいるのですか?私は信用などしませんからね」


マーメードのマリリンさんは、ミサキとの繋がりから、迫害を受けていた過去があり、嫌悪感は私たち以上にある。


「自分も、イマイチ大隊長殿の考えには疑問であります」


「ガオガオガオ」


「ダイル様も、油断ならぬ相手だと申しております」


「僕も、お払いしてもらうべきだと思うな」


概ね、ミサキさんを良く思っていない意見になる。


「私もマスターの考えには賛成できません。危険がないとは言えないからです。しかし、マスターが信じるのなら、私も信じたいから、様子見にします」


テレサだけが、意見の先にある言葉を口にしてくれた。


そして、『私を信じたい』と言う言葉に反論できる者は居なかった。


「きゃはははは!雪姫、その程度の反対意見しかないなら、私をスノープリンセスに入れなさい」


えええええええええええええ!?


「マスターを信じますが、2号店は人員が多くいますから、遠慮します」


「本店は手不足であります。猫の手より幽霊の手の方が使えるかもであります」


「ガオガオガオ」


「ダイル様は、スピリチュアルなものは苦手だと申しております」


こいつら・・逃げやがった。


「没落の本店で我慢しましょう。高報酬は望みませんよ。お神酒と供え物があれば文句は言いません。高級なお酒と、高級なお供え物ならばですが」


流石に公式に名前が載るギルドメンバーは、不味くないか?


「駄目なのですか?」


「ダメってわけじゃないけど、前例がね」


確かに希望すれば、犯罪歴などは問わない。大事なのは今だからだ。


死んでるから、禊みそぎが済んでいるとも考えられるし、今の穴に関する功績は評価できる。


「私の言う事、ギルドの決まり、何一つ、逆らうことなく守れる?」


「それは無理です。あのガキ共の様にですね。確か待機を命じていましたね」


痛いところを突くのは生前からだが、ソーマ達を引き合いに出されるとは。


「わかった。私はOKを出すよ。でも王様の許可が居る。ミサキさんは世界の大罪人だ。世界が受け入れない事には、その先はない。分かるよね?」


にやりと笑うミサキさん。




何か企んでる顔だ!


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