第3話 邂逅③
「あなたが王技を持っているからよ。」
初めて聞いた単語だった。
いや、あの檻の中で過ごしてたから、初めて聞く単語なんて沢山あるはずなんだが、妙に聞き覚えがあった。
「その…オーギ?ってのは、一体なんなんだ?」
「王技とは極少数の人間しか持っていない人知を超えた能力のことです。」
「たとえばどんな能力があるんだ?」
「それは…」
「ごほんっ!!」
とカノは大きく咳払いをし、両手を腰に当て妙に気取っていた。
「それについては私が直々に説明するわ。」
と胸に手を当てて意気揚々に語った。
「なぜなら私自身が王技を持っているからよ!」
「おぉ!一体どんな能力なんだ?あーもしかしてだけど、俺が王技を持っていると見抜いたのが能力に関係してるのか?」
「察しがいいわね。そうよ、私の王技<識眼>《
ファインダー》によってあなたが王技を持っているとを判別できたわ。」
またもや、聞きなれない単語がとび出てきた。
「そのふぁいんだーってやつはどんな能力なんだ?」
「お嬢様の王技は特定のものを探す能力に長けています。今回ですと、「王技を持っている者」と範囲を定め、その範囲に当てはまっているものは、お嬢様曰く、光って見えるらしいです。」
お嬢様に変わってレインが説明してくれた。
この男は先ほどから、お嬢様に変わって色々と説明してくるな。人にものを教えるのが好きなんだろうか。
「かなり便利な能力だな。使い勝手が良さそうだ。」
「まぁ少し条件というか制約というか、厳しい部分はありますが、かなりいい方の能力だと思います。」
その条件とやらを聞いてみたいが、これ以上話を広げてもあれなので、また後日聞くことにしよう。
「じゃあ、その王技ってやつはどうやって発動させるんだ?」
「個人差といいますか、人によってかなりバラつきがありますので未だにこれといった発動条件などはよくわかっていないのです。生まれてすぐに使えるようになっていたり、ある日突然使えるようになったりするものですから。」
「じゃあ地道に探していくしか道はないか」
というと、レインは口に手を当て、困った顔で悩んでいるようすだった。
「…言おうか言わまいか悩みましたが、一応言っておくことにします。発動条件に関してはわかりませんが、能力自体はわかることができますよ。」
「…それはどんな方法なんだ?」
もしかしたらとんでもない試練が待ち構えてたり、激痛を伴うものなのかと勘繰っていたが、
「 お嬢様の王技<識眼>ファインダーよりも細かく王技の情報がわかる王技を持っている少女がいます。その子に見てもらうんです。能力を知れば発動条件の手がかりにもつながると思いますよ。」
とあまりにも拍子抜けの内容だった。
「そんなことでいいのか。その子はどこにいるんだ?」
と聞くと、少し深刻そうな顔で
「その少女は王宮と呼ばれる場所にいるのですが…なにせ、その少女は国王の娘。そう簡単には会わせてはくれません。」
「国王の娘だから、会えないのか?」
「あ、いや少し説明不足でしたね。国王は過保護なことで有名なんです。厳重な警備の中、少女は外に出ることも禁止されていて…ほとんど監禁のようなものですよ。母親さえも今の顔を知らないと言われているくらいですからね。」
「ひどい話だなぁ。じゃあ結局地道に探すしかないな。」
「そうですね。一応打診はしておきますが…あまり期待しないでください。」
「りょーかい。」
久しぶりに喋ってたので少し疲れたな。
ブフーっと息を吐き姿勢を正すと、目の前にはジトーっとこちらを見てくるカノの姿があった。
「…話は終わったかしら?」
苛立ちを含んだその物言いは俺の背筋を凍らせるのには十分だった。
「…はい。終わりました。」
そうぎこちなく答えると、カノはサッと踵を返し、
「じゃあ、いくわよ。」
と一言。
「どこに行くんだ?」
と聞くと、カノは呆れたようにこちらをみた。
「どこって、家にきまってるでしょ。」
「そうか。それしかないか。」
「まったく、しっかりしなさいよ。」
と一喝。また怒られてしまった。
「あ、そうだ。最後にもう一ついいか?」
「何よ。」
「飯は美味いか?」
と冗談まじりできくと、
「当然よ。」
と澄ました顔で俺の前をとことこと歩いていく。美味い飯があると聞いて、ついて行かないやつはこの世にはいないだろうとくだらないことを考えながら、俺は鼻歌まじりでカノについていった。
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